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54-避難 [キング-06]

ゲートから最初に現れたのは、片手で乳飲み子を抱え、子どもの手を引いた女性。
八重が翻訳機を使って声を掛ける。
その後、何人か駆け込んで来たが、次々にとは行かず気を揉んだ。
避難は大変だったという。
子どもでさえも容赦なく襲おうとした者もいたそうだ。
半端に蘇って来る記憶に苛立ってもいたのだろう、暴力的な連中に見つからない様にゲートへ向かう途中捕まった者もいたそうだ。
リーダーが現れ、結果十三人の子どもと十二人の大人が和の国へ逃れる事に成功した。

「データ上子どもの人数は変わってないから、残ってる子ども達はまだ無事みたいね、大人は二十三人に減ったわ。」
「そこまで憎しみ合ってた人達がここで同じ国になったのは…。」
「管理者は対立を知らずに同じ人種だと判断したのでしょうね。」
「緊急の問題は大人の内特権階級ではない六人、十八時になったら祖国に強制送還されて罰を受ける事になる訳でしょ。」
「すぐマリアと相談する。」

マリアとは他の国民のいる所では会話出来ない。
自室に戻り呼び出して相談。
七人の子ども達はこちらに転送してくれる事になった、こちらに来た全員が罰を受ける事無く滞在する事も特例として認められた。
皆の所へ戻ると、子ども達はすでに転送されて来ていて抱きしめ合う親子であろう姿も。
問題は向こうに残っている十一人の大人達だ。

「キングどうする?」
「檻を利用しよう、ロック、ゲート前に檻を設置出来るか?」
「ああ、牛用のを持って来るよ。」
「人を殺したらすぐ死ぬという事だから、この十一人はまだ人を殺していないし、殺せば死ぬと分っていると思う。
向こう側のゲート設定は開放状態にしておいて貰ったから、こちらの操作だけでどうにでも出来る。
まあ、彼等の言い分を聞こうじゃないか、もちろん檻の用意をしてからだがね。
一花、難民の皆さんは空いてる住宅へ、麗子は食事の手配を頼む。」
「はい。」
「三之助、他国からの応援は?」
「もう直ぐやって来るわ、今、檻を設置する話もしたから、応援到着後ゲート使用不可になる事も了承済みよ。」
「ゲートの近くに人がいれば良いが。」
「早く落ち着いて欲しいわね。」
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