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32-自己紹介 [キング-04]

城へ戻って八人でテーブルを囲む。

「三丁目の連中に助けられたな。」
「そうね、突然の事だったから混乱したけど、過去の記憶が蘇ったからと言ってここが楽園で有る事に変わりはないわよね。」
「子ども達が戦争という愚かしい行為をしない様に、しなくて済む様にしないとな。」
「衝撃的な記憶の復活だったのに今は…、マリアさまが何かしてくれたのかしら…。」
「かもな、何にしても感謝しないといけないが。」
「そうだな、でも、まずは改めて自己紹介をさせて貰うよ、私は神山慶介、過去の記憶が終わる頃は二十四歳独身、開戦後の話は省略させてもらう、その前は自分で起こした会社の社長でそこそこ稼いでいた。」
「そうか、キングは社長だったのか、納得できるな、俺は医者だったが、開戦後は大して人の命を救えなかったし、ここではその知識が役に立たない…、あの頃は三十六歳だった、ただ、今の感覚はキングの年代と心身ともに変わらない、これは現在の自分を医学的に考察した結論だ、それから過去の名前は捨てようと思う、ここでは三郎、東城三郎で通したいと思う。」
「あっ、それもそうだ、私の過去の名は忘れてくれ、北城大吾で頼む。」
「はは、キングをその名で呼ぶ気にはならないよ、今さら過去の名は、そうだなこれを機に名前を変えたいという人以外は気にしなくて良いんじゃないのか。
年齢も三郎の言う通り怪しい物さ、ここで生まれ変わって全員二十四歳という事にしてくれよ、でないと色々ややこしくなりそうなんだ。
ただ、ここに医師がいるという事に意味は有ると思う、将来三郎の知識が必要になる可能性は否定できないと思うが。」
「あ…、そうだな、ロック有難う、心が軽くなったよ。」
「どういたしまして、自分は研究所の所長をしていた、結構最先端の技術研究だと自負してたが、ここの管理者達のレベルには遠く及ばない、今は彼等の技術をもっと知りたいと考えている、知的好奇心って奴がこれまで以上に湧き上がってるとこだ。」
「それは羨ましいよ、工場長の経験なんて活かせても大したことないからな。」
「ふふ、セブンはしっかり経験を活かして来たと思うけど、四丁目や五丁目の人達からの信頼の厚さは工場長の経験有ってのものじゃないかしら。」
「八重はやっぱり保育とかの?」
「ええ、保育園の園長をしてたわ、でもね色々な制約が有って思う様には出来てなかった、落ち着いて考え始めたら、昔出来なかったことがここでは出来るんじゃないかって、過去の嫌な事を思い出す暇が有ったら、ここの子ども達の将来を考えようって考えてるの、二回目の人生がこんな楽園での生活なんだから頑張るわよ。」
「う~ん、私は微妙なのよね、百貨店の店長っていらなくない?」
「いや、一花、店長としての経験はセブン同様生かされていると思うよ、リーダーとしての器という形でね。」
「何時の日かこの国にも百貨店がオープンする日が訪れるかもしれないよな。」
「ええ、今は労働に対して食料提供と言う形だけど、人口が増えたら…、経済学的な研究が必要な気がするわ。」
「三之助は経済関係だったのか?」
「う~ん、経済というより数学的というか、私は皆さんの様な実績はなかったのですが社会全体のバランスを…、まあ机上の空論になりかねないレベルですが。」
「それでも、リーダーシップを発揮してたよね?」
「人のバランスという自分自身の研究テーマからの無意識の行動だったのかもしれません。」
「わあ~、難しそうでついて行けないかも、キングを愛する麗子さんは皆さんにおいしい物を食べて頂く事だけが生きがいですの。」
「あっ、麗子の事知ってる…、って言うか知ってた、若き天才料理人花柳院静、私、あなたの大ファンだったのに…。」
「それは、芸名ですけどね。」
「どうりで食事が美味しい訳だ、ここを楽園と思わせる原動力だよな。」
「という事はキングと同じぐらいの歳よね。」
「ふふ、前の世界で出会っていたら、やはりキングを選んでたかも。」
「はは、問題はこれから六十二人で自己紹介をする事と、英語を話す隣人達との交流だが。」
「今の私達の自己紹介を参考にして貰っても良いと思うな、基本開戦後の事は心にしまっておく、前の名前や年齢などの発表は自由、でも何をしてたかは教えて欲しいよね。」
「時間が掛かってもやらないとな、隣人とのコンタクトはこの後すぐやろうと思う、彼等も記憶を取り戻したかどうか分からないが、まずは国内を落ち着かせる事を優先したいと話すつもりだ。」
「それで良いと思う、二つの事を同時進行というのは無理が有るよ。」

連絡を取った所、先方も記憶が蘇って来てるがこちら程急速ではないらしい、次回会うのは落ち着いてからという事で一致した。
後は、毎日定時に連絡を取り合う事にした、自動翻訳を使わずに英語でだ。
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