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31-住人達 [キング-04]

幸いな事に子ども達もその場にいた。
それが大人達の心を落ち着かせる事になったと思う。
六十二名の大人達はお互いを確認し合った。
目の前に居るのが今の仲間なのだ。

「キング、有難う…、お陰で少し落ち着いたよ、プロテクトのかかっていた記憶…、楽しい物ではないと予想はしていたが…、はは、でも俺達には今が有るんだよな、そしてこの子等には辛い思いはさせたくない、な、八重、そうだろ。」
「ええ、ロック、私にとってここでの生活は…、幻の様な物と感じる事も有ったけど…、過去の記憶が戻った今…、ふふ、まだ全然分からないけど…、あなたと出会えて、仲間達と出会えて…、マリアさまの本心は分からないけど、はは何言ってんだろう、私、でもみんな大好きよ。」
「あの頃…、悲しい事ばっかだったけど必死に生きてた、でもここでだって私も頑張ってるんだから、ほら私達の子は素敵に成長してくれているでしょ。」
「一花…、過去の記憶が戻ったら、お前に対する気持ちはどうなるのだろうって、正直言って不安も有った、でも変わらないよ…。」
「はは、きつい仕打ちだったな、ふ~、俺は落ち着いて来たが皆はどうだ?」
「ええ、三郎、何時迄も子ども達に不安そうな顔をさせている訳にも行かないでしょ。」
「俺はかつて医師だった、精神的にきつい人がいたら相談に乗るからな。」
「三郎は医者だったのか。」
「ああ、専門は内科、今まで全く思い出せなかったのは必要が無かったからだと思う、管理者の力はすごいよ。」
「これは自己紹介のやり直しが必要ね。」
「今日の仕事は休めない作業を除いて休みにしようか。」
「い、いや俺は働きたい、体を動かしていないと頭がおかしくなりそうだ。」
「それは構わないな、餌やりとか欠かせない作業は私がするから、手伝ってくれるか。」
「キング、そんな作業は俺達でやるよ、それより管理者達が俺達に与えてくれたチャンスの場で有るこの国をもっと良くする事を考えてくれ、俺の過去はひどいものだ、でもここではちゃんと子どもを持って楽しく働いている、それはキングのお陰だ、あの英語を話す連中達とも交流して行くんだろ、俺の希望は連中とサッカーの試合をする事だ、頼むよ。」
「びっくりして混乱してたけど、私も大丈夫、嫌な夢は見そうだけど、子ども達の面倒を見てれば今の素晴らしさを感じれると思うわ。」
「キング、今まで以上に国王として俺達を導いてくれないか、各部署のリーダー達も過去に囚われず今まで通りお願いしたいと思うが、なあ皆、それで構わないだろ。」

私達に気を使って話してくれたのは三丁目の住人達だ。
彼らは戦争の前もあまり良い人生を送って来なかったという事だろうか。
何にしても、城の住人以外から前向きな発言が出た事は大きい。
彼等に感謝の言葉を述べ八人での会議をお願いして解散とした。
ほとんどの者がその日予定していた作業へと向かった様だ。
過去を頭に叩きこまれた状態で、今の現実へと。
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