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28-プロテクト [キング-03]

ここで最初に生まれた一花達の子が我々の暦で四歳になった頃、久しぶりにマリアからの呼びかけが有った。
内容を城の住人達に知らせる。

「次に現れるゲートは今までの物とは大きく異なるそうだ。」
「という事は単純にここの労働力を増やすという事ではないのだな。」
「ああ、相手国家のデータがこちらに事前にもたらされる、それと自動翻訳機を用意してくれる。
さらに事前に対話する事が出来、会いたくなかったら会わなくて良いそうだ。」
「国家間の交流か、マリアにとってもここは国と捉えられている訳なんだな。」
「交流出来る規模に成長した国家はまだ一か国のみだが今後増えるそうだ。」
「という事は我等が王国は幾つか有る国家の中でもトップクラスの成長度という事か。」
「さぞかしマリアさまも鼻が高いのでは。」
「いや、そういう感覚では無く、ここまでは準備期間でこれからが本番ということ、ゲームでは無く研究だとはっきり言われた。」
「研究か…。」
「私に違和感ないわ、私自身もここでの生活を観察者的な視点で見てきたから。」
「そうか、一花もか。」
「言われてみれば俺だって、特殊な環境で人間がどう行動するものなのか、自分も含めてだが観察してきたな。」
「みんな記憶の方はどうなんだ?」
「プロテクトが掛かってる部分以外は、きっかけが有れば普通に思い出すが。」
「研究の進み具合によって、そのプロテクトも外れるのかしら。」
「ここでの幸せな生活に慣れて来ているから…、今更過去の事はどうでもよくは有るが、俺が何者だったのかを思い出してすっきりしたいとは思うな。」
「マリアから、全員の記憶を少しずつ戻して行くと言われた。」
「キング、本当か、そうなるとこれから大変だぞ。」
「蘇る記憶は楽しくない気がしてるのは私だけじゃないわよね。」
「ああ、それと向き合いながら、国民の態度がどう変化して行くかに気を掛けなければいけなくなる。」
「ここへ来る前高い地位にいたのに今は豚の世話とかだと、精神的に不安定になる者も出て来そうだな。」
「明日、大人全員に話そうと思うがどうだろう。」
「そうだな、事前に分かっていれば覚悟も出来てトラブルを減らせるかもしれない。」
「翻訳機を必要とする人達との交流、記憶のプロテクトが外れる、これからが私達の真価を問われる本番なのだと思う。
今更だが私達は仲間として、どんな記憶が蘇ろうとこれから先も力を合わせて進んで行きたい、子ども達の為にな。」
「そうよね、過去の記憶は子ども達には関係ない、もちろん伝えるべき事で有れば伝えなくてはいけないけど、キングの今の言葉は心に刻んでおくわ。」
「俺達の結束が揺らいだら、全員の不安を増す事にもなる、これを乗り切って王国を盤石なものにしようぜ。」

楽しい記憶ばかりならプロテクトを掛ける必要も無いだろうという事は、以前から話の中で出ていた。
八人全員が親となった今、振り返る事より前に進む事の重要性は皆、理解している。
だが、やはり不安なのは当たり前の事だ。
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