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26-子ども達 [キング-03]

八つ目のゲートを開ける話はなかなか来なかった。
私でさえマリアの存在を忘れてしまう程、特別な事のなかったこの期間は、子育ての為にマリアが与えてくれたのかもしれない。
私達は、子どもの誕生や成長を楽しみながら過ごした。
だが、生まれ出づる者有れば死に逝く者有り、九兵衛と武蔵が相次いで亡くなった。
二人とも驚くほどのスピードで老化が進んでいた。
九兵衛の最後は面倒を見てくれていた者に何かしら不満が有ったのか、怒鳴りつけた途端苦しみだして息絶えたという。
これで、大人は六十二名に減ったが、子どもは五十三名になっている。

「子ども達を見てると何となくコロニー毎の特性が出てる気がするわ。」
「へ~、麗子どんな風なんだ?」
「城に住んでる私達の子ども達は、言葉を覚えるのが早いみたい。
音楽村の子達は音に対しての反応が他の子達とは違ってて、運動能力は特に三丁目の子達が高いの。」
「成程、他の子達は?」
「四丁目の子達は積み木遊びが好き、五丁目は動物が好きみたいな。」
「あっ、それだと親達の能力を引き継いでいる感があるな、それぞれ秘めた能力がまだ有るのかもしれないが。」
「そうだな、まだ小さいから変に決めつけずに才能を伸ばしてやりたいところだ。」
「二丁目の子はどうする?」
「厄介者二人の死と引き換えに環境が改善された様だから大丈夫みたい、大変だったら預かる話はして有るけど。」
「子ども達は夜もここで過ごせるとは言え、まだ母親が必要だろう」
「八重に懐いてる子が多いから、八重に余裕が有ったら大丈夫じゃないか。」
「そうね、年長の子達は下の子を気遣ってくれるし。」
「三歳でも思いやりの心が芽生えている、教育の賜物って事か。」
「八重、有難うな、みんな良い子に育ってる、ただ二丁目の子達はちょっと微妙だな。」
「ええ、遺伝か環境か…、早目に手を打つ必要が有るわね。」
「ちょっと八重と一緒に親達の話を聞いてみて、手を考えるよ。」
「ロック、仕事が増えても大丈夫か?」
「ああ、仕事の方は俺抜きで回る様に成って来たからな。
最近は、体を動かす作業は自分達でやるからって三丁目の連中が率先して働いてくれる、他の連中も指示する必要がなくなってきた。」
「その余力を子ども達の為に使うのであれば誰も文句は言わないと思うわ、キングに反抗的だった連中も早死にしたくないと思い始めたみたいよ。」
「でも未だに、この島で昼間過ごせるのはキングのお陰だって事に気付いてないよな。」
「子ども達には正しく知って欲しいわね。」
「やはり学校の設立とそのカリキュラムは今から考えて行かないとな。」
「ああ、ここの子達は全員俺達の子だ、親はともかく子ども達は幸せに暮らして欲しい。」
「幼児期は私が担当という事で良いかしら。」
「ああ、八重が適任だ、やはり知識的には幼児期止まりなのか?」
「ええ、蘇って来る記憶からは算数とかを教えた経験はなかったみたいなの。」
「算数か、なあキング、データベースにはそういった情報はないのか。」
「最近確認した所ではなかった、マリアはまだその必要がないと考えているのかもしれない。
記憶を辿ってカリキュラムを作ろうとは思っているが、近い内に皆で記憶の掘り下げをして教科書を作るか?」
「算数だって教え方一つで楽しくもつまらなくもなる、算数は俺が担当するよ。」
「三郎は計算が得意だもんな。」
「得意分野か、他の国民にも相談してみるか。」
「そうだな。」
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