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02-声 [キング-01]

何とか動ける様になって、自分のいるスペースがかなり狭い事が分かった頃、自分が空腹だという事に気付く。
まあ、気付いた所でどうする事も出来ない。
壁が普通に固い事を確認した後は拳の痛みに耐える以外する事はなくなっていた。

「気分はどうだ?」

唐突にインタビューされる事は想定の範囲外だった、いや何も想定していなかったというのが本当の所だ。
突然の声に驚きはしたが、なぜか冷静に応えたのはその声が若い女性のものだったからかもしれない。
声に優しは感じられなかった、上官が部下に問うと言ったところか、それでも嫌いな声ではなかったので。

「最悪だな。」

まあ、静かな口調で応えた。

「だろうな、何か望みは有るか?」

この状況での問いとしてはどうかと思う、現状では何から要求すれば良いのか分からない、ただ声の主になめられるのは否定したかったし、まあ敵意は感じられなかった。

「まずは飯だ、後部屋をもう少し明るくして欲しい。」
「そうか、何が喰いたい?」
「そうだな、まずは寿司とビール…。」

寿司もビールもしっかり自分の好みを指定してやった。
どうせ出せまいという想いからだ。
だが、意に反して注文通りの品が出て来た。
目の前に、唐突にだ。
そして気付く、自分はこんなものを好む人間なのだと、そう、怪しい記憶の断片から自分は寿司とビールをチョイスした訳だ。
味は悪くなかったと思う、こんな状況でなかったら。
食事が終わるまで静かだった。
部屋は幾分明るくなったが、雰囲気は変わらなかった。
グレー一色、光源は分からない、床も含め部屋全体がぼんやり明るいという感じだ。

「どうだ、落ち着いたか。」
「ああ。」

何となく落ち着いてはいるが目の前の皿が突然消えるのを見たばかりだから微妙では有る。
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