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01-目覚め [キング-01]

それまでは寝ていたのだと思う。
もしかすると気絶していたのかも知れない。
何故なら記憶というものがおかしな事になっていたからだ。
しばらく自分が誰なのか考えてみたが結論は出なかった。
だが、こうして思考しているのだから、脳が完全に壊れているという訳ではないのだろう。
目覚めた、つまり目を開けた訳だが周りは薄暗くほんとに目を開けてるのかどうか自信はない。
まずは自分の置かれている状況の確認からすべきだと脳のどこからか指令が発せられた。
それが間違ってない事だと判断した私は意識を自分の下、つまりどこに横たわってるのかに向けてみた。
寝心地は悪くない、手には普通に布団の感触が伝わる。
掛け布団が存在する事を目でも確認した、かなり暗いが何とか見える。
ほんとに暗いのか自分の目に異常が有るのか二つの可能性に気付く。
しばらくして暗いながらも少しづつ見える様になったという事は目にも問題が有った様だ。
横たわったまま見える範囲の確認をして行く。
天井はグレーの単色、暗いからグレーに見えるのかもしれない。
壁もグレーの単色、目に入る範囲に窓もドアもない。
これ以上の情報を得るには起き上がらなければならないが、今一つ力が入らない。
色々な可能性を考えてみる。
何らかの事故に会い記憶だけでなく体にも問題が有るのか、単なる病気か、長く寝すぎて体に変調をきたしているのか等々。
結論は出ないが手がかろうじて動くので意識を手に持って行き動かす。
続けていると、少しずつほぐれ血流が良くなったのか徐々に動きが良くなって行く。
体をほぐす作業をしばらく続けた結果、姿勢を変える事にも成功した。
それに伴なって部屋全体を視認出来る様になったが、その事は自分を喜びに導いてくれなかった。
部屋には何も無い、いや、そもそも自分の存在している空間が部屋と呼んで問題の無い代物なのかどうかも怪しい。
始めは天井と壁と認識していたがその境目は見当たらない、窓もドアもない。
単なるグレーに囲まれた空間に寝具と自分だけが存在するという現実と向き合ってすぐに絶望しなかったのは単に現状が理解出来てなかったからだと思う。
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