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事業展開-18 [安藤優-10]

株式会社つぼみの海外展開は概ね順調に進んだ、すべてが上手く行った訳ではないが、総合ブランドとしてのYou&優はその質の高さが故に、海外でも受け入れられ、大きな利益をもたらした。
少々のつまづきをカバーした上での事だ。
その資金は事業拡大に費やされ、会社の規模も大きくなっていった。
つぼみの設立から六年近くになろうかという頃、優の家には両親の友人達が集まっていた。

「優はもっとハイレベルな大学に籍を置くのかと思ってたがな。」
「杉浦さん、籍こそ近所の大学ですけど、実際の研究は色々な大学が協力してくれますからね、桜根総合研究所主任研究員という肩書をでっち上げましたから、結構自由がきくんですよ。」
「主任研究員? 肩書は所長でもよかったんじゃないのか。」
「いえいえ、所長になると雑用が多くなりそうですから、自由に飛び回れなくなると面白くないですし。」
「はは、飛び回っていてじっくり研究出来るのか?」
「自分の場合は一つの研究にずっと張り付いている訳でなく、共同研究者にアドバイスをしたりという事がメインになってますからね、正確には数えていませんが、現時点で取り組んでいる研究は三十ぐらい、論文も三件並行して執筆中です。」
「う~ん、大丈夫か? 二十歳まで後二年ぐらいだぞ。」
「えっ?」
「天才も二十歳過ぎればただの人、って知らないのか?」
「はは、僕のタイムリミットは後二年ですか、そうだな、ただの人になったら何をしようかな。」
「ちゃんと貯金してるのか?」
「まあそれなりに有りますよ、特許権や著作権…、何か色々入ってきますからね、贅沢しなければ老後の心配も要りません。」
「そうか、だから大学の名前を気にする必要も無い訳なんだな、して社長業の方はどうなんだ。」
「相変わらず順調ですよ、杉浦さんに手伝って頂いて作った基礎が大きかったです、各国での初期展開は杉浦さんの人脈がなかったら、どれだけ時間のロスをした事か分かりません。
今では日本と各国という関係だけでなく、海外拠点同士が有機的に繋がり始めています。
グループ間取引の意味が海外でも理解されて、桜根全体の成長を考える人が増えました。」
「随分花が開いたという事か、何時迄株式会社つぼみなんだ。」
「いえ、我々はまだまだ蕾なんだという事を社員に話しています、終わりなき挑戦ですからね。」
「ふむ、頼もしいな、国内は親父さんががっちり固めて、息子は海外展開の先頭に立って引っ張る、桜根は安泰だな。」
「でも同族会社ではないのですから、もっと色んな人が表に出て良いと思うのですが。」
「確かにそうだな、ちょっと喝を入れてやるかな…、まあそんな事はどうでも良い、優、儂とツーショット写真を頼めんか?」
「えっ、構いませんが。」
「行きつけの飲み屋の子が優のファンなんだ、彼女に優との写真を見せつけてやろうと思ってな。」
「はは、相変わらずですね。」
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