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社長-20 [安藤優-06]

三週間後、一人の工場長が坂本社長の元を訪れて。

「社長、経費節約と思ってやって来た事に色々間違いが有った様です。」
「ああ、少し耳にしてるが、実際の所はどうなんだ?」
「工場の備品はより安い物をと、指示していたのですが…、安くても早く痛む、使いずらいでは意味がない事に今頃気付かされるとは場長失格でした、桜根グループの製品は確かに高いですが、使い易くて、丈夫そうなんです、極端な例だと箒なのですが、随分前に百円ショップで買って来た箒は一日で壊れてゴミになりました、それに懲りてまともな物を使う様になったのですが、それでも今回購入した物と比べたら全然違います、掃除が楽になって楽しくなったなんて声も出てますよ。」
「価格の問題だけじゃないという事か、だから高くても売れるのだろうな。」
「その箒について調べてみたら、伝統的な製品をベースに、かなりの研究の上に生み出された物だそうで、さらにその工場では伝統的な箒の製造もその技術を守るべく取り組んでみえるそうです。」
「そうか、う~ん考えさせられるな、そう言えば、桜根グループで使ってる割りばしは割高な国産だけと聞いた事が有る、国内産を使う事によって日本の森林を守る事になるそうだ、単純に利益を追求してる訳では無い…、それが企業のイメージアップにも繋がっていると思う。
どうかな、色々な事を桜根グループ標準にという話、東郷工場でも実行に移したいと思うが。」
「そうですね、業務提携以来つぼみの社員から色々教えて頂いて、随分良くなりました、社長の指示が有ればさらに踏み込みますよ。」
「工場の横に桜根グループ直営店も開いて貰わないとな、工場の近くにはまだなかったと思うが。」
「確かに有りませんが、場所的にどうなのでしょう、売れますかね?」
「まず店を出す、そこを起点に工場の外観も含めて綺麗にして行く、働くなら綺麗な方が良いからな、予算や行政と相談しながら、少しずつ周辺環境も良くし、それを広げて行く、まずはシンボル的存在なんだ、従業員の給料も桜根グループ標準にするから、給料が増える社員も多いだろう、直営店で買う事は強制しないが、工場内で良い製品を実際に使った人は高くても買うかもしれない、扱ってる商品の質の高さを知る人も増えて来てるから、店を維持して行くぐらいは稼げると思う。」
「なるほど、商売の事は専門外で良く分かりませんが。」
「直営店は規模も様々だが、海外も含めるとすでに千二百店を越えてるそうで、それが一つとして不採算店舗が無いのは安藤社長親子のお力による所だそうだ。」
「いや~、少年社長には驚かされっぱなしです、新商品の開発に大きく係わって下さっただけでなく、工場のラインの弱点も指摘して下さって改良の案も、ただの美少年お飾り社長と思っていたのですが、とてつもなく失礼な事でした。」
「全くだ、有る程度のお力を分かってるつもりで、コンサルタントをお願いしたのだが、まさかここまでとは思いもしなかったよ。」
「工場全体に活気がみなぎって作業効率も上がってます、社長の決断のおかげですよ。」
「いや~、私なんぞは…。」
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