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小学生の頃-10 [安藤優-02]

父は優に自分の仕事の話をよくしていた、それは教育というより自分の考えを深めたり確認したりする彼自身の為の作業だったという。
難しい分析や考察をしてくれる部下は何人もいた、しかし単純に素直に応えてくれる存在は稀有だったのだ。
自分の視察に優を同行させたのは、その延長線、そして、そこで優が予想を上回る成果をもたらしてくれた事により、彼は「優が楽しそうに難しい話を理解しようと興味を持ってくれた事が会社とってプラスになっている。」と言い切るようになっていた。
始めは子どもを仕事の場に連れ出す事に違和感を覚えていた連中も納得せざるを得ないだけの功績を上げるにつれ、優に会社での役職をという声も出て来た。

社長特務室、室長、小学六年生の時、優に与えられた役職だ。
これは社員達にとって都合の良い事だった。
それまで、優の事をどう呼ぶかは皆の悩みどころだったのである。
小学生とはいえ助言をしてくれる存在であり社長の息子だ。
坊ちゃんという呼び方もあるが社長親子はそれを好まなかった、優くん、安藤くん、どう呼んでもしっくり来なかったというのが彼らの本音だったのだ。
「室長、名刺が出来ました。」
「有難うございます。」
「如何です、室長になられて。」
「少し緊張しています、今まで通りの事をすれば良いと言われていますが、父から、これからは遊びじゃなく仕事、勉強だ、と言われましたので。」
「えっ、今までは遊びだったのですか?」
「はい、楽しいですよね会社って。」
「は、はい。」
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