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卒業旅行-16 [チーム桜-06]

仙台での夜、ホテルにて。

「佐紀、今日の午後は温泉だったんだろ、どうだった。」
「なんか、のんびり出来た。」
「いや、桜子ちゃんや裕子ちゃん達と一緒でさ。」
「もしかして佐々木くん達との話聞いてたの? 寝てると思ってたのに。」
「はは、普通聞こえるだろ、一応周りにいた連中には他言無用とお願いしておいたがな。」
「あ~、ごめんなさい、話が面白くてつい…。」
「いいよ、で彼女達はどんな感じなのかな。」
「憧れの存在なんだって、でもまあうまく行きそうな方向かな、裕子ちゃんは遠藤くんに感謝してたし、色々誘導尋問してみたけど告られて断る感じではなかったわ、ただ桜子ちゃんは性格的にいきなりだと素直に返せないかも。」
「そこのフォローはどうするの?」
「まあ多少の紆余曲折が有った方が面白いんじゃない?」
「はは、楽しんでるんだな。」
「ふふ、もちろんよ。」
「でも佐紀は完全に直球勝負だったよな、俺に。」
「だって理子さんもいたし…。」
「はは、正直あの頃は恋愛の事を考える余裕がなかったけど、ちょっと姉さんに相談したら、そんな余裕もなくては社長なんて務まらないって。」
「ふふ、そっか、色々有ったね。」
「だな、でもようやく大学も卒業で、これからまた大変なのかな。」
「そうね、でも…、出来れば浮気はほどほどに…。」
「えっ? 何言い出すんだよ、心配しなくてもそんなにもてないよ、俺は。」
「そこなのよ、社長に就任する前は隆二のほんとの魅力に気付く人が少なかったけどさ…。」
「ごめん、今回の旅行はちょっと強行軍過ぎたな、明日はゆっくりしよう、あせらなければならない様な案件もないから、今から指示を出したら、散歩にでも行かないか。」
「うん。」

「遠藤社長、風呂上がりですか?」
「ああ、くつろげたよ。」
「そうですよね、福岡、金沢は色々忙しかったですから。」
「ねえ、裕子ちゃん今夜は余裕が有るから、少し散歩でも行かないか?」
「はい行きましょう、遠藤社長今回の旅行はお仕事ばかりで、たまにはのんびりしましょうよ。」
「そうだな。」

「佐々木先輩、裕子見ませんでした?」
「ああ、桜子ちゃんに伝言頼まれてた、遠藤と散歩に行って来るって。」
「へ~、裕子頑張ってるんだ。」
「えっ? 頑張ってるって?」
「いえ、何でもないです。」
「今回の旅行中は沢山演奏してくれて有難うな。」
「そんな、今回もほんとに色んな経験が出来て楽しいです…。
即席のオーケストラでも実力者が集まるとハイレベルの演奏が出来るのですね、バイオリンコンチェルトも、実力から言ったら私より上手な方もいらっしゃったでしょうに。」
「そんな事ないよ、桜子の演奏はどんどん良くなってる、人の心に届く演奏が出来てるから、大物シンガーソングライターが指名して下さったと思うよ。」
「はぁ~、あれは緊張したなぁ~。」
「でも満足してみえたそうだよ、そんなに緊張してる様には見えなかったし。」
「前ほどではないかも、遠藤先輩が色々な経験の場を作って下さったから、今回は会場で佐々木先輩も見守っていて下さったし。」
「はは、俺が見てても何の役にも立たないさ。」
「そんなことないです、植物園での演奏を先輩が耳にして下さって、今の自分がいるのですから。」
「そう言ってくれると嬉しいよ、そうだ、俺さチェロを始めてみようかと思うんだ。」
「えっ、どうしてです?」
「まあバイオリンで食ってく気はないから、趣味としてなら有りかと思ってさ。」
「先輩のバイオリン好きなんだけどな。」
「でも、この前みたいなバイオリン二本の合奏よりバイオリンとチェロの方が様になると思わないか?」
「先輩、チェロの経験は有るのですか?」
「まあ高校生の頃に少しだけ、でもこの前ちょっと弾いてみたら、何とかなりそうな気もしてさ、家族の楽しみで演奏するぐらいなら行けると思ったんだ。」
「わ~、先輩のチェロとか~、家族…、子ども達にはピアノかバイオリン、私がビオラを弾いて、ふふコントラバスはさすがに大変かしら、でも管楽器奏者が一人ぐらいいても良いな~。」
「はは、光景が目に浮かぶよ。」
「う~ん…、曲はね…、チャイコフ…、あっ、御免なさい何かとんでもない妄想をしていた様な…。」
「とんでもない妄想なの? そんなに赤くならなくても、それから…、今すぐという事でもないけど、えっと、俺と付き合ってくれないか。」
「え~、え~、ど、どうしよう。」
「こんな時は、素直に、はい、って言えば良いんだよ。」
「はい。」
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