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卒業旅行-13 [チーム桜-06]

金沢での三日目、桜根傘下入りを希望する旅館の視察を終えて。

「佐紀、旅館は難しそうだな、人を引き付ける魅力が有れば安定した経営も出来るのだろうけど。」
「まずは改装かしら、どれくらいの費用を掛けるかは料金設定によっても色々変わって来るわね。」
「北陸支社が出来た時に活用したいから、社長クラスの方にも満足して頂ける部屋が必要だと思うな。」
「そう考えると金沢中心部からの近さはプラス材料ね。」
「まずは北陸支社開設へ向けての準備室を旅館に置こうか。」
「社員の宿泊場所はとりあえず確保出来たわね、でも旅館名の頭に桜根グループって付けたら勝手に繁盛しちゃいそうなんだけど。」
「まあな、でもその質が低かったら俺達にとってマイナスになるだろ。」
「そうね、という事は旅館の担当社員を誰にするのかも重要になって来るわね。」
「う~ん、山上部長と相談か…、でも人事部も大変だからな、拡大路線を意識して部の体制強化をして来て頂いたけど、ちょっと予想以上のペースになって来てるから…。」
「そうだ、広報部に温泉旅行が好きって人がいるけど、打診してみようか?」
「どんな人?」
「旅館の宣伝活動は大丈夫、色々な旅館の事を知ってそうなの、よく温泉へ行って来ましたってお土産のお菓子を配ってみえるから、ただ経営面の事は経験ないかも。」
「一応話を持ちかけてみてくれるか、広報部に問題なければだけど。」
「広報部は就職希望者が多いの、学生の実習希望も多いし、問題は山崎さんの転勤と業務内容かな…、でもまずは連絡を取ってみるわね。」
「ああ。」

その夜、ホテルで。

「遠藤、新社長達はどうだった?」
「杉原さん中心にまとまりそうだよ、佐藤さんも問題ないって言ってくれた。」
「なら後は任せるよ、でも何か有ったらすぐ教えてくれな。」
「何か有ったら安藤社長にって、杉原さん達にも伝えておいたよ、制作部は桜根の幹に当たる重要な会社だからって念を押しながらね。」
「うん、桜根のというよりチーム桜の幹だと思うよ、マスコミをうまく利用出来たのは遠藤と佐々木のおかげだよ。」
「安藤社長、これからもよろしくお願いします。」
「なんだよ改まって。」
「いや、副社長になるからさ、まあ今までと微妙に違うだけの様な気もしてるけどな。」
「はは、今まで通り組織で動く事の重要性を忘れないでいてくれれば問題無いと思う、お任せする所はきちんと任せてさ。」
「ああ、それは考えてる、新社長を無視して現場を動かす様なことはしないよ、したいけど。」
「はは、なあこの金沢での新案件なんだけど旅館の再生ってどう思う?」
「現状は芳しくないって事か?」
「良くはない、ただ、すぐ倒産というレベルでもない。」
「取り立てて特徴の有る訳でもない旅館なのか、そんなの有る程度改装して社員教育し直して…、料理人の質が低ければ…、場合によっては入れ替えて、チーム桜か桜根グループを旅館名の頭にくっつけて、通販サイトで紹介、予約も出来る様にして、それで客が来なかったら、制作部でチーム桜の挑戦シリーズとして一本番組を作れば、余程の事がない限り立て直せると思ってるんじゃないのか、安藤社長は、まあ最悪は社員向けの保養施設として活用かな。」
「はは、まあそんな所だ、ただ担当者をどうするか…。」
「北陸支社希望は、まだいないのか?」
「数名の希望が有って四月から研修を始める、ただ旅館の経営となると経験者がいないからな。」
「そうか…、まずは一人に任せて、その試行錯誤の様子をうちの動画サイトで公開、チーム桜全体から助言やサポート希望を募るというのはどうだ。」
「ああ、それなら面白いかも。」

「隆二、旅館担当の件だけど今返事が来たわ、やってみたいって、ただ旅館経営なんて素人だから結構不安は有るそうよ。」
「遠藤、広報部の人なんだけど、温泉好きの。」
「佐紀、それってもしかして山崎さん?」
「そうよ、彼女の温泉好きは遠藤くんも知る程なのね。」
「まあな、彼女メインで行くなら…、ついでに周辺の温泉紹介番組も作れる、彼女ぐらいのルックスなら人気が出てもおかしく無いし、頭の良い人だからトレーニングをすればトークも問題ないと思う、それと、山崎さんの彼氏って知ってる? いやまだそこまでには至ってないのかな…。」
「ふふ、何か心当たりが有るのね。」
「制作部に山崎さんの知り合いがいて結構仲良さそうなんだよ、広報部がらみの番組制作の様子を見てて感じたんだけど…。
彼に山崎さんがらみの映像を撮らせて、その光景を別の角度から撮影して二人がどうなって行くかを見守るって番組、面白くないかな。」
「二人に迷惑じゃなきゃ良いけど。」
「うまく行ったら結婚式ですごい作品を見せられるし、だめだったら編集して他の番組のワンシーンぐらいには出来ると思う。」
「ならば制作部からも何人か常駐させるか。」
「ああ、内容が九州支社とかぶっても、北陸の人は地元の動きを知りたいだろうし、色々考えているんだ。」
「人員的には大丈夫なのか?」
「こっちの学生達ともコンタクトをとってるからな、今日は新社長達を含めてアルバイト候補達と会って来たよ、桜根の大きい支社を設立する所には、制作部の支社か出張所か必要だと思うし。」
「そうだな、ただ心配なのは質の維持だが。」
「それは新社長達にも、しっかり伝えたよ、質が下がったら絶対他社に勝てなくなるからって、質を向上させる為に、自分は社長を降りたんだとね。」
「ならば正社員の増員も考えてくれな。」
「ああ、ぼつぼつ転職希望も届いてる、番組制作会社って労働条件が悪い所も少なくないみたいなんだ、結構優秀な人材が流れてくる可能性も有るぞ。」
「そうか…、競争社会だから…、そういう人達をしっかり受け止めて行けるだけの余力は欲しいな。」
「榊原さんは営業担当として、日本中のテレビ局ラジオ局などを回るって話してくれたよ、作品の質が高いから売り込み易いって。」
「社長を杉原さんにして本社を守って貰って…、榊原さんの本心はそんな所に有ったのかもな、須藤さんがバックにいて下さったら安心だろうし。」
「遠藤くん、しばらくは人も機材も増やして行く事になると思うけど、どの程度の規模までかは見通してるの?」
「人の方は学生実習バイト希望者が多いから、そこをきちんと束ねられる社員次第かな、機材の方はサポート企業とも相談してる、リース契約も有るし、まあ制作班の実績に応じて機材も振り分けて行くけどね。」
「予算の方はどう?」
「サポート企業関連のCM制作もさせて貰ってるから、恵まれ過ぎてる環境だよ。」
「はは、知らない内に桜子や裕子が出てるCMが幾つか全国に流れて…、このかわいい子誰?って状態なんだろ。」
「うちと全然関係なかった企業からもオファーが来始めたからな、まあ今の内ならギャラが安いという感覚かもしれないが、ただ裕子ちゃんはともかく桜子ちゃんは撮影クルーが変わると、ちょっとな。」
「大事な姫たちを守ってくれな。」
「もちろんだ。」
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