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桜根-01 [チーム桜-04]

桜根オフィス、人事担当山上の元を訪れたのは新聞記者の加藤だ。

「加藤さんはうちの転職制度に興味が有るのですね。」
「はい、グループ内転職制度はうまく行ってるのですか?」
「そうですね、今有る案件は…、伊藤さん今処理してる案件を教えてくれるかな。」
「はい山上部長、横山さんの所へ転職希望が有りました。」
「加藤さん、横山さんは山間の町で新会社を設立するんですよ。
「伊藤さんどんな事情が有りました?」
「ええ、お子さんや奥さんの為に、一度住む環境を変えてみたいそうです。」
「今所属してる会社の方はどう?」
「結構やり手の部長なので出すのはつらいけど、新会社の事情も考慮した上でOKだそうです。
ただ、完全に関係を切るのではなく、今後も社員としての立場を残してメインは新会社でも、何かしらの貢献をしてということで話しがまとまったそうです。」
「そうか、転職制度にそんな展開も有りとは面白いな。」
「加藤さん優秀な人材が桜根グループから出ていかない事だけでも良いと思いませんか。」
「確かにそうですね。」

「もう一件は会社に適応出来てない人です、私が面接しましたが少し難しそうです、社交的ではなくて、会社側も転職して欲しいみたいでした。」
「何か特技はないのかな。」
「一回目の面接では特に聞き出せていません。」
「ならば職場体験だな、扱いは研修にして、まずは希望を聞いてから桜根傘下を色々経験して貰って、あっ、社交的でないのなら横山さんの新会社も経験してもらおうか、二回目の面接は私がするよ。」
「はい、お願いします、適材適所と行けば嬉しいのですが。」
「難しいかもな、でもこの転職制度がなかったら、会社をやめた後大変な思いをしかねない、その辺りを本人がどれぐらい自覚出来てるかだ。
もしかしたらカウンセリングの必要が有るかもしれないね。」
「正直言って面接での印象は桜根傘下に居て貰わなくてもという感じでした、でも安藤社長はそんな人も見捨てるなっておっしゃってますから。」
「ああ、加藤さん、桜根グループは中小企業の集合体ですから、優秀な人材ばかりでは有りません。
でも我が社の安藤社長は能力的に劣る人にも安定した生活を送って欲しいと考えています。」
「その辺りが桜根の特殊性なんですね。」
「はい、伊藤さん特殊事情が有るのはこの二件だけかな。」
「はい、研修や出向の方は各企業同志連絡を取り合って進めて下さっています、形が出来て来ましたし、成功例失敗例の情報も共有出来ていますから今の所問題有りません。」
「有難う自分の作業に戻って下さい。」
「はい。」
「加藤さん、こんな感じなのですが、もう少し説明させて下さい。
実は今までに転職した人は当初考えていたよりずいぶん少なかったんです。」
「職場に不満を持ってる方が少なかったのですか?」
「いえ、ただ転職したいとの声に対して、その理由を皆で徹底的に考えて改善というシステムを早い段階で構築したんです。
不満が改善されれば転職の必要もなくなり、それが全体の業績アップにも繋がりました。
こんな話しも有ります、ある会社で七人の転職希望が有りました、その原因を調べたら一人の上司に行き当たりまして、原因追究に他社の社員や桜根社員が参加しましたから内部の人間より話しやすかったみたいです、その上司を出向で他の会社に移動させた所、職場の雰囲気が良くなって作業効率が格段に向上したそうです。
もちろん七人とも元の職場です。」
「小さな現場単体では解決出来なかったのですね。」
「はい、小さい会社だと人間関係が悪くなっても逃げ場がなかったりしてやめざるを得ない、でも再就職の不安も有る。
そこを桜根グループでフォローすればという感じです。
研修で他社の事を知ったり、出向で自分の力を考えたり、転職でチャレンジしたりと、人を動かすメリットは働く人の意欲向上に繋がり、全体の生産性を上げています。」
「でも慣れた人が他社に移ってしまったり、給与水準が違ってとかのトラブルはないのですか。」
「逆に慣れ過ぎてる事の弊害を感じています。
給与はグループ内で少しずつ平均化しています。
もちろん頑張ってる人にはそれなりの報酬も用意していますし。」
「問題はないのですか?」
「もちろん全くない訳では有りませんが、問題が見つかった時は複数の、立場の違った社員で話し合って解決に務めています。
こういった事の解決までの流れ、もしくは失敗は多くの社員共有の情報となっていますので、似た事例が発生した時の参考になっています。
まあ、先ほどの出向を命ぜられた上役も、その後の業績を知って、出向先で大人しく真面目に働いてるそうですよ。
仕事に慣れ過ぎて、慢心していたのでしょうね。」
「そうですか、やはり配置転換は桜根で主導しているのですか?」
「いえ、特殊な例を除いて基本的に本人の希望を考慮してとなっています。
強制される形は意欲を削ぐ事にもなりますから。」
「働く人に優しい訳ですね、しかし一つのトラブルに多くの社員が関わったり、研修という事が重視されると人件費がかさみませんか?」
「一時的にはそうかもしれません、でも長い目で全体の生産性を考えた時には無駄ではないと考えています。」
「我々は歪を沢山抱えたブラック企業の真逆を目指しています。」
「あっ、そういう事でしたか。」
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