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架空サークル-64 [動植物園再生-07]

「植物園なのに自分達の生活にとって一番大切な野菜の展示がないよな。」

野菜プロジェクトの発端はこんな一言だった。

「植物園が出来た頃は、わざわざ展示する必要もなかったんだろうな。」
「俺も農場実習がなかったら、葉っぱ見たってそれがジャガイモだなんて分からないままだったと思う。」
「でも、年間を通しての展示は難しくないかしら?」
「その季節ごとの展示で良いんじゃないか。」
「そうね畑を一つ…、そこから今の農業の抱える問題を提起するってどう?」
「畑の管理は植物園にとっては負担だったということかしら。」
「俺達、農学部の実習としてなら簡単そうな気もするけど、でも場所の問題が有るな…。」

企画に賛成する者は多かったが、最大の問題はどこに畑を作るかだ。
限られたスペース、必ずしも植物園内でなくとも良いと検討してみるが、答えは出なかった。
木を切り倒したくないという思いはメンバーに共通していた。
畑を作れたらという想定の元、色々な案を模索し発表して来たが野菜プロジェクトのメンバーはすっきりしない状態でいた。
そんなある日。

「なあ、屋上ってどうだ?」
「屋上?」
「新獣舎設計プロジェクトって知ってるか?」
「知ってるわ、でもまだ実現するか微妙なんでしょ。」
「それでも、乗っかって良いんじゃないか?」
「あっ、はは、文字通りか…。」
「どういうことだよ。」
「新獣舎の屋上に畑を作るのさ。」
「あっ、そうか…、なら取れたての野菜をおサルさんに食べて貰うとかも有りだな。」
「あくまでも畑を展示したいんだけどな。」
「まだ、間に合いますかね、横山リーダー。」
「連絡取ってみるよ。」
席を離れる横山。

「ね、今ある建物の屋上だって使えないかな?」
「う~ん、微妙に古い建物…、園内の施設では難しくないかしら…。」
「屋上庭園とかは都市部でこれからもっと普及して行かなきゃいけないと思うから、そのサンプル的要素も有りだろ。」
「動植物園にこだわるな、佐々木代表の言葉忘れてないよな。」
「だな、でもこいつは俺達だけじゃ荷が重くないか。」
「もう少し内容をまとめて発信してくか?」
「屋上野菜プロジェクト、自然教育的要素、都市環境改善ってことも関係するのかな。」
「食を考えるってことも。」
「なあ、ふと思ったんだけど、この企画がらみでさ、過疎地で生産された野菜を販売してってどうかな。」
「あっ、そう来たか。」
「過疎地のお年寄りって、売ることあまり考えてないから、無農薬で少量ながらもおいしいの作ってるって聞いたこと有る。」
「色々な野菜作ってということは、野菜展示の参考にもなるんじゃないか。」
「真逆の工場栽培と並べて紹介して行くのも有りかもな。」

そこへ横山が戻る。
「新獣舎屋上利用の件は、新規企画課の人も賛成してくれたよ。」
「何か今までのモヤモヤが晴れた。」
「でも、やることがメチャ増えたって気もするわ。」
「面白くなったってことだよな。」
「そうよね。」


花ワールド-hirata
ぷちぎふと工房 コンサルジュ
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