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Spiegel Im Spiegel [F組~淳一と亜美]

コンコン

「あっ、母さんかな?
どうぞ。」
「ふふ、おじゃまでしょうけど、おやつ持ってきたわよ。」
「有難うございます。」
「あれっ? 母さんいつもとちょっと違うんじゃない?」
「そりゃ、娘の彼氏の前ですからね。」
「へ~。」
「ふふ、あっちには娘の彼氏の訪問に、とまどって、そわそわして、おいお前、ちょっと様子を見てこい、なんて言ってる人もいますけどね。」
「もう、父さんたら…。」
「でもね、私たち、淳一さんと亜美の演奏聴かさせてもらったし、淳一さんがテストで学年五位だったってことも聞いてるから…、さっきもきちんと挨拶してくださったし。
でね、居間で落ち着かないでいる人は、真面目そうな子で、何も突っ込めないのも、気持ちのやり場がないもんだなぁ~って。
ふふ、もう、花嫁の父の心境みたいなのよ。」
「…。」
「じ、自分はまだ亜美さんのこと全然知らないのですが、ほんとにまだ…。
でも、亜美さんにふさわしい男になりたいと思っています。」
「はは、亜美が淳一さんにふさわしいだけの女になれるかどうかの方が問題よね。」
「もう、母さんたら、私、がんばるって決めたんだから。」
「はいはい、淳一さん、いたらない娘ですがよろしくね。」
「いえ、こちらこそ…。」
「で、向こうでいじけてる人からのリクエストでね。」
「は、はい?」
「CD出すなら、ちょっと微妙に難しいかもしれないけど、ピアノとチェロならどうだろうって。
あっ、パソコン立ち上がっているならお聞かせした方が早いわね。」



「なんか、力が抜けるわね…。」
「確かに、う~ん、こういう曲って難しそうだな…。」
「でも、雪乃さまと盛次さまで演奏したら…。」
「うん、また違った味わいを表現できる気もする。」
「亜美、雪乃さまと盛次さまって?」
「淳一さんのひいお婆さまと、ひいお爺さまなんだけど、淳一さんちのピアノが雪乃さまでチェロが盛次さまなの。」
「う~ん、あの録音聴いてなかったら笑いとばすとこだったけど、私も二人の生演奏聴きたくなってきた。」
「収録の日にはぜひうちに来てください、両親も喜ぶと思いますので。」
「は、はい。」
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