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お江戸JAZZ (中) [短編集-6]

ふと気付くと店の舞台で演奏していた。
帰ってきたウルトラマンを。

客からは大喝采。
歌い出す客もいる。
訳のわからないまま演奏を続ける、というか、何時になくリクエストが多くて終われない…。

ようやく一区切りつけて、休憩室へ。

「何が起こったんだ、土屋?」
と、流山に訊かれる。
「俺に解る訳ないだろ。」

そこへ、店のマネージャーがやってきて…。
「いや~、今日の演出すごかったですね、どうやったんです?」
「えっ? どうって?」
「虹の彼方にで突然消えたと思ったら、帰ってきたウルトラマンで再登場なんて、土屋さんたちらしい演出ですけど…、ピアノとかも突然消すなんてトリック、何時の間に用意していたんです?」
「あ、ああ、まあ企業秘密ってことだな。」
そうか、こっちでは、そんな感じだったのか…。
「まあ、消えてたのが一分ぐらいだったから特に問題になりませんでしたけど、あんな演出は前もって教えておいて下さいね。」
「ああ、できればそうするよ。」
適当に答えながら帰り支度を済ませる。
「今日は昇竜だな。」
河留がつぶやく。
応えることなく、三人で店を出る。

昇竜までは歩いて三分。
まずはビールに餃子。
「何だったんだ?」
と、流山。
「タイムトリップって奴か?」
河留が応える。
「幻覚とかじゃないよな?」
「三人揃ってか?」
「何が何だか分からんな。」
「何の問題も無く終わった、否、むしろ店では大うけだったから…、気にすることないのか。」
「まあな…、でも、あれ、江戸時代か?」
「ああ、そんな気がする。」
「はは、宇宙戦艦ヤマトなんて聴いたことなかったろうな。」
「だいたい、ピアノもドラムもベースも始めてだったんじゃないか?」
「だろうな…、JAZZなんて聴いたことない人たちに、俺たちの演奏はどう映ったんだろう?」
「う~ん、津軽三味線の発祥って何時頃なんだ?」
「そうか、津軽三味線か…、JAZZの定義なんて知らんが、あれは日本のJAZZだよな。」
「ということは、向こうの皆さんにも楽しんでもらえた可能性はある訳だ、俺たちの演奏。」

話しは尽きない。
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