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F組三国志 8-4 [F組三国志 8 清水ちさと]

「お父さま。」
「うん? どうした、ちさと。」
「お父さまは、昨日あの後、小山先生とどんなお話しをされたのですか?」
「テスト団体戦のこととかね、でも先生忙しそうだったから、とりあえずは次の授業がF組のみんなにとって、より有益になるよう、授業内容のお願いをしておいたよ。」
「さすがお師匠さまです、学問所の見習い先生にもご指導なさるなんて。」
「和彦、指導なんて程度じゃないよ、簡単に説明させてもらっただけさ。
で、これが次回の授業に向けたプリント。」
「えっ、先回よりずいぶん多くないですか…、お父さま?」
「小山先生にもこれを渡すからね。
テスト範囲まで一気に済ませてもらおうと考えている。
密度が高くなるから、ついていけない人が出てくるかもしれないけど、そこは復習で補う。
予習に比重を置いていた部分を、復習に回すと考えてくれればいい。
とにかくテスト範囲まで早めに済ませて、後に余裕を作るという作戦さ。」
「ということは、予習は軽めでもいいってことですか?」
「うん、でも一度はこのプリントに目を通しておいて欲しいな。」
「じゃあ省吾、プリント配る時、みんなにもそのあたりを話した方がいいわね。」
「ああ、美咲、頼むよ。
そうだ、和彦、プリントの印刷とか、美咲の手伝い頼めないかな。
俺は、別で作っておきたいプリントがあってさ。」
「承知いたしました、お師匠さま。」
「お父さま、私もお手伝いしますわ。」
「おお、ちさと、ありがとうな。」
「いつも美咲さまにはご迷惑をおかけしてしまって。」
「あら、和彦さん、お父さまとお母さまは楽しんでやってるのよ、ね、お母さま。」
「ふふ、そうね、夫婦で一緒に働くって楽しいことなのよ、和彦。」
「でも、お師匠さまたちいつも忙しそうで。」
「美咲はね。
俺も色々頼んでるし、テストが終わったら少しゆっくりしてもらうつもりだよ。
まあ、俺はいつも適当にやってるから。」
「そういえば、お父さまって授業中はあまり目立たないですよね?」
「授業と違うところを学習してることが多いからね。」
「えっ?」
「数学の時間は数学やってるけど、高三の内容だったりするし。」
「でも…、お師匠さま、先生に注意されたりしないのは、こっそりやってるからですか?」
「ふふ、先生方も省吾が高一の内に高三までの範囲を終わらせるつもりだってご存知なのよ。」
「ほんとに!?」
「ああ、中二の終わり頃から高校の学習内容に入っていたからね。
時間の無駄を減らしたかったから、高木先生に相談したんだ。」
「そしたら高木先生が色々動いて下さったそうなの。
で、最近は、私が職員室へ行くと、なぜかすぐに省吾の話題で盛り上がるのよね~、先生方…。
大学はどこを目指してるとか、将来は理系か文系か、とか…、いつ結婚するのか、なんて…。」
「あら~、お母さまったら、職員室でものろけてくるんですか?」
「う~ん、私はそんなつもりじゃないんだけど~。」
「はは、でもね、まだ先生方にも話してない企みもあってね、微妙に進行中なんだけど。」
「えっ? お師匠さま、どんな企みなんです。」
「鶴翼の陣には秘密があってね、実は教室の後ろの方こそが重要なんだ。」
「えっ、後ろの方は寝てたい人のためとか…。」
「昨日誰が座ってた?」
「え~と、哲平さん、麻里子さん、うちのチームの正信くん、お父さまとお母さま、誰も授業中寝てたいお人じゃないわね。」
「もちろんさ、で、三人のリーダーと美咲は授業中に余裕があると感じたら、自分の苦手なとこの学習に取り組んでいたんだ。
前の席で先生と向き合う人たちががんばってくれてたから、ずいぶん自分の学習がはかどったみたい。」
「え~っと真面目に授業に取り組むための鶴翼の陣って思ってたけど…。」
「はは、これから、鶴翼の陣は変えていきたいっていうか変わっていくと思っている。
根本は、授業は何かってことだよ。」
「授業は教えてもらう場、ですよね。」
「まあそうなんだけど、自分から学習に取り組んだら、教えてもらう必要のないことだっていくらでもある。
自分で、教科書を読んで理解できることだって少なくないだろ。
教科書に書いてあること以上の、内容の濃い授業は大いに聞くべきなんだけどね…。
大きな声じゃあ言えないが、F組のメンバーが聞く価値のない部分が授業中に結構あるんじゃないのかな?」
「そう言われてみると…、がんばろうってモチベーションあげても、いまいち集中できなかった授業は…。」
「無駄でしょ、その時間を自分の苦手克服に当てた方が有効だし、哲平なんて部活でずいぶんな時間を費やしているから…、はっきり言って授業時間は貴重なんだ。
授業時間をより有効に生かすことを、F組のみんなが考え始めたら、鶴翼の陣はその形を変えるってことだな。」
「自分は、最前列で岡崎たちへ刺激を与えて、と考えていたのですけど。」
「その必要はもうないんじゃないかな、彼らも自覚し始めてるから。
それより、後ろへ下がって自分の時間を有効に使い、岡崎たちに教える時のことを考えてた方が効率的かもしれないよ。」
「はい、一度、麻里子さまとも相談してみます。」
「ふふ、姉御じゃなくて、麻里子さまなのね。」
「この世界にいる時は、ってことで、ちゃんと麻里子さまのお許しも得てあります。」
「ふふ。」
「でも、お師匠さま、自分が陣の後方へ下がると、ちさとお嬢さまのお世話ができなくなりますが。」
「ちさと、どうする?」
「私も…、教科によって動いてもいい訳だから、はは、和彦さんが近くにいなくても大丈夫よ。」
「はは、和彦はちょっと残念そうだな。」
「は、はい…、ちさとお嬢さまは、自分の大切な味方ですから…。」

あっ、それって…、私のこと大切に思ってくれてるってこと?
和彦さん、はっきり言ってくれた。
ほんとに積極的になろうとしてる現われなのかな…?
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