SSブログ

F組三国志 4-5 [F組三国志 4 山影静]

まだ、陽は高い。
が、植物園を出た所で遠足は終わり。
後は自由に帰宅ということになっている。
とはいえみんな地下鉄へ向かうのか、ばらばらになるでもなく、上池の方へ。
あらっ?

「お~い、みんな集まってくれ~。」
「哲平、どうした?」
「なんだ~?」
「みんなさ、ここの都市伝説知ってるだろ。」
「はは、『東山公園のボートにカップルで乗ると、そのカップルは別れる。』ってやつか。」
「でさ、せっかくだから実験してみないか?」
「実験?」
「カップルと言えば?」
「そりゃ、赤澤と秋山だわな。」
「ということで、お二人でボートに乗っていただこうかと。」
「なに~、聞いてないぞ!」
「実験なんて…。」
「美咲、逃げるか?」
「ええ。」
「甘いな、奥田さん頼む。」
「えっ? 麻里子もぐるなの~。」
「F組の団結力をなめちゃだめよ~。」
「あっ、囲まれてる、哲平、謀ったな~。」
「麻里子ったらひど~い。」
「はは、秋山さん、団結したF組の姿、嬉しいでしょ。」
「え~。」
「乗っちゃえ乗っちゃえ。」
「クラス公認のデートなんだからさ。」
「でも…。」
「まあ、実験に協力してくたら、ボート代は俺たちが持つし。」
「哲平…。」
「さらに、都市伝説に打ち勝つようなら、私たちはお二人を暖かく見守ってあげるからさ。」
「麻里子…。」

「美咲、こりゃ勝てないよ。」
「みたいね。」

「淳一、ボートの手配は?」
「おう、大丈夫だ。」

「ではこちらへどうぞ。」
「さ、手をつないで。」
「ちゃ~ん ちゃちゃちゃ~ん♪ ちゃんちゃちゃちゃ~ん♪ …♪」
「おいおい、ワーグナーか?」
「ローエングリンね。」
「なんで婚礼の合唱なんだよ!」
「はいは~い、細かいことは気にしないでお足元にご注意くださ~い。」

「どうして手漕ぎボートなんだ。」
「基本だろ。」
「別れるって話し、親父が中学生の頃には、普通に広まってたらしいぞ。」
「でも、なんか羨ましくもあるな。」
「あの二人、お似合いだから、ずっと仲良くしてて欲しいわね。」
「その割に、この企みに積極的だったのはどなた?」
「だって、だって、楽しいじゃん。」
「ははは。」
「あの二人、こっち見ないようにしてるぞ。」

「でさ、俺たちこれからどうすんの?」
「私もボート乗りた~い。」
「じゃあ、希望者で適当にペアとか作って乗るか?」
「さんせ~い。」
「でも二人のじゃまはだめよ。」
「了解。」
「じゃあ、二三人で組を作って、組が出来たところからボートの方へ行って。」
「おう。」

な、なんか盛り上がってる。
F組ってこんなクラスだったか?
不思議な気分だ。
あらっ、哲平さん、何人にも誘われてるのに…、断ってるみたい…。

「乗る人はみんな乗ったのかな?
あっ、谷口さんは?」
「私、船だめなの、哲平くんは乗らないの?」
「そうだな。」
あれっ? こっち見た?

「山影さんボートに乗らない?」
「えっと…。」
「いいじゃん、まだカップルって訳でもないし、手漕ぎじゃなければ大丈夫だよ。」
「はい。」
って、まだ? 手漕ぎじゃなければ大丈夫?
なんかドキドキしてきた。

「どうだった、山影さん、今日は楽しかった?」
「はい、とっても…。」
「よかった。」
「しずかって呼んでくれたらもっと…。」

ああ、何言ってるんだろ私ったら…。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0