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F組三国志 4-3 [F組三国志 4 山影静]

東山公園では他の六グループと個々に合流してということらしい。
少々面倒な気もするが…。

一箇所目はサイ。
赤澤さんの言葉に甘えて、とりあえずはスケッチを始める。
ふむ。
普段描くことの無いサイはモデルとして結構面白い。
形ができてくると、何となく周りが騒々しくなってきた。
人に見られながら描くというのは気恥ずかしいものだが…。
少し新鮮さも感じる。

程よくサイが描きあがった頃、一グループ目との交流が終わったみたいだ。
絵の方は自宅に帰って仕上げるか、そのままにするか…。

「山影さん、描くの早いんだね、びっくりしたよ。」
「集中してると、簡単なスケッチは時間かからないの。」
「そうなんだ…。」
なにやら、たぶん岡崎だったと思う男子が、色々話しかけてくるが…、後は、面倒になって聞き流すことにした。
時々頷くふりをしていれば良いだろう。

「ねえ、山影さん。」
赤澤さんだ。
とっさに返事ができずに、頷いて済ませてしまった。
少し緊張する。
適当にあしらって済む人じゃない、というよりも済ませたくない。

「山影さんの絵をさ、クラスのプリント、ほら遠足に関する連絡とかの印刷物配ったでしょ。
あんなのに使わせてもらいたいと思うんだけどどうかな?」
「別に…。」
「良いんだね。」
「あと、今回の遠足のまとめみたいなのも作るんだけどさ。」
「テキストデータで文を下されば、イラストを入れて、レイアウトも組んで仕上げます。」
「ほんと、そりゃ助かるし楽しみだ。」
ほんと、なんでこんなこと口から出てしまったんだろう。
遠足で浮かれているのか。
親の目を盗んでやるのか…、でも。

「DTP作業とかは好きなんです。」
これは本心だ。

「そうなんだ、じゃあDTPのソフトなんかも持ってるんだね。」
「はい。」
「なに? そのDTPって?」
「岡崎、DeskTop Publishingだよ。」
「えっ?」
「直樹くん、お兄さんはこちらのお姉さんと大切なお話しがあるからね、向こうのペンギンさんのとこへ先に行っててくれないかな。」
「は~い、って、ぼくはガキか?」
「ふふ。」
「え~っと、ソフトは?」
「PageMaker。」
「それならうちにもある、バージョンが違うかもしれないけど。」
「父の会社でなら、カラー出力もできます。」
「それは心強い、文化祭も視野に入れているからね。
うちも親父関係で色々できるから、また相談しようよ。」
「はい。
あっ、写真とかはどうしますか?」
「う~ん、極力、絵にした方が面白いと思うんだけど、写真使うにしてもちょっと加工して個性的な感じにしたらどうだろう?」
「ふふ、良いですね。」
あれっ、なんかわくわくしてる、自分…。
でも、いいのか…、問題は親だ。

「そう言えば、お母さんが絵を描いたりすることに否定的って言ってたよね、そっちは大丈夫?」
「だめかも…。」
「そりゃなんとかなんないかな。」
「数学の小テストで思う様に点が取れてないんで…。」
「はは、みんな数学で苦しんでいるのか。」
「赤澤さんは数学得意だからうらやましいです。」
「小テストで点が取れたら、余裕ができそうなの?」
「はい、小テストをクリアできれば、定期テストもそれなりにと思っていますから。」
「ねえ、哲平と秋山さんとで数学の勉強会やる予定があるんだけどさ。」
「ふふ、照れないで、美咲とかで構いませんよ。」
「へへ、まあ、良かったら参加しない?」
「えっ、いいんですか?」
「嫌じゃなかったらだけど。」
えっ、えっ、秋山さんの前に哲平って言わなかった?

「嫌な訳ありません。」
本心だ。
哲平さんは私にないものを色々持っている、かっこいいし憧れている。
遠い存在ではあるが…。

「哲平のこととかあまり知らないかもしれないけど、いい奴なんだぜ。
意外と真面目だしね。」
「はい、で、何時なんですか?」
「おっ、乗り気なんだね。
一回目は次の日曜日、基本、哲平の都合に合わせることになってるから二回目以降は未定だけどね。」
「ほんとに私も良いのですか。」
「うん、大丈夫、二人には俺から話しておくから。
場所は俺んち、ほら地下鉄でここに来る途中、覚王山ってあったろ、あそこから歩いて十分ってとこなんだ。
で、少しお願いもあるんだけど。」
「はい。」
「当日はね、まず数学、それから今回の遠足のまとめ、ここまでは時間を区切ってやりたいんだ。
だらだらとやるんじゃなくてね。」
「はい。」
「で、終わったら、ちょっとおしゃべりしたりとかさ。
俺も、まだ哲平や、み、美咲のこととかでも、よく知ってる訳じゃないからね。」
「そうなんですか。」
「そうなんです~。
で、もう一つ個人的なお願いがあってね。」
「はい。」
「み、美咲を家へ呼ぶの初めてなんだ。
で、ちょっとドキドキでさ。」
「ふふ、赤澤さんも普通の人みたい。」
「え~、俺、普通だよ~。」
「大丈夫です、ちゃんと協力しますよ。」
「よろしくね。
あ、そろそろペンギンの前で集合する時間だ。」

赤澤さんも普通の人なんだ~、ふふ、ちょっぴりかわいいかも。
あれっ、そう言えば…、男の子と気軽に話してた…、私。
始めは緊張してたのに。

赤澤さんは不思議な人だ。
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