SSブログ

変革-8 [権じいの村-12]

「市長、そろそろ…。」
「はい。
こんにちは、時間になりましたので始めさせていただきます。
今日は当市の建設業関係の方々にお集まりいただきました。
皆さんお忙しい中、有難うございます。
さて先日、白川総理から、協力要請がありまして…。」
「慶次さんで良いよ! 高柳さん。」
「はは、そうですね、慶次さんからは、入札制度を変える実験をして欲しいとの要請です。」
「おっ、俺達に関係する実験かっ?」
「はい、大きな柱は三つです。
一つ目は、市が発注する土木工事、建築工事の受注業者を話し合いで決めること。」
「二つ目は、市の建築部から、皆さんの下請け業者に工事代金を直接払う形にするという試み。
これは全体でなく、試験的に幾つかの工事で実施してみるという感じです。
三つ目は、市営の建設会社設立。
小規模な会社で実験的な会社運営を試してみることが目的です。」

「話し合いで決めるって談合じゃないのか?」
「そう、談合ですね、但し総理大臣お墨付きの談合ですが。
法律も特別なのを通すそうですから、警察のご厄介になることは有りません。
この実験のキーワードは、適正な金額、ということになります。
公的な資金を使って工事を行う訳ですから、少しでも安くという考えがあっての入札制度だったかもしれません。
しかし、今までに多くの不正が行われてきたことも事実です。
それをなくすためのキーワードは情報公開です。

三つの実験的取り組みとなりますので、それぞれ担当者から説明させていただきます。
では初めは斉藤くんだね。」
「はい、よろしくお願いします。
今回は簡単にポイントだけ説明させていただきます。
例として、市で橋をかけることが決定したとします。
となると、設計、施工をして下さる会社の募集となりますね。
これは特に今までと変わりはありません。
応募の時には今までの実績、会社の状況などを報告していただきます。
この段階で調査をさせていただいて、適切でないと判断された会社の方は談合に参加できません。
もちろん普通に真面目に経営されてる会社を切ることは有りませんのでご安心下さい。
今までのデータも残っていますが、これを機にデータの再確認とさせていただきます。
それを元に今後は特殊な作業に関しては直接依頼ということも有ります。
もちろん公募によらないこの様な依頼は、その内容をここにお集まりの皆さん中心に積極的に情報公開していく予定です。
この報告は二度目からは簡略化していただいて構いません。
一度目の報告と変わりがなければ、前回提出書類のまま、といった記述のみで構いません。
また今後受注いただいた工事に関しては、こちらで実績として追加していきますので、特に報告して頂く必要はありません。
ただ…、資金繰りが悪化してる、作業中に事故を起してしまった、従業員が問題行動を起した、といった場合は積極的に報告していただきたいです。
ペナルティーを課すということではなく、市としてサポートしていきたいからです。
さて、談合の日に集まって下さった方々には計画の概要と費用の提示をさせていただきます。
設計に関しては、今までの例から適正な金額に近いものが提示出来ると思っています。
施工を請け負って頂く企業の方々にも金額の提示をさせて頂きますが、安すぎるとか、もう少し安くても大丈夫といった声を聞かせて頂きたいと思っています。
金額が決まった段階で受注したいという企業同士話し合いを行って頂きます。
今回は譲るから次回は、とか作業を分割して共同でとか…。」
「はは、思いっきり談合だな。」
「でも、入札の無駄は減るんじゃないか。」
「もし話しがまとまらなかったら?」
「くじで決めていただく予定ですが、地元優先という形にもしたいです。
完成した橋を自分が使うことになると思ったらいい加減な仕事は出来ませんし、完成したらこの橋は自分が設計したとか、自分かけたとか、近所の人達にも伝えて欲しいのです。
どこの誰が作った橋なのか知らないで利用するのと、知って利用するのとでは大きな違いがあります。
橋への愛着とかですね。」
「譲ってばかりだったら、おまんまの食い上げだな。」
「その心配は当分ないと思います。
わが市の財政状況はずいぶん改善されていまして、景気対策も兼ねて工事の数も増える予定です。
国関連の施設も建設計画が進みつつあるようですから、市内の会社だけでは足りなくなると思います。
極力、中小企業さんにお願いするよう白川総理からの指示も来ていますから、周辺市町村、県内の企業という形で工事をお願いしていくことになると思います。
ここでお願いしておきたいことは、受注した仕事を別の企業に丸投げしないで欲しいということです。
ここにお集まりの皆さんは、白川総理や高柳市長の方向性をご理解いただいてる方ばかりだと思いますので言うまでもないことだとは思いますが。」
「俺も、新党宇宙の党員だからな。」
「はは、ここにいる皆…、党員じゃない奴の方が少ないんじゃないのか。」
「そうかも知れませんね、でも党員でなくても談合に参加できますから、ご安心下さい。
後、実際の工事等で実際にかかった費用の検証もさせていただきます。
単なる企業努力で安く出来たというのなら問題は有りませんが、原料等の納入業者に無理な値引きをさせた、人件費を無理に抑えた、といったことはNGです。」
「ったりめ~だ、そんな奴いたら俺がぶん殴ってやる。」
「ははは。」
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0