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変革-7 [権じいの村-12]

「ただいま。」
「おかえりなさい。」

「おっ、テレビで、宵越しの金は持たねえっ! を紹介してるんだ、慶次さんも出るの?」
「慶次さんは出ないみたい、でも高柳市長が少しコメントをするそうよ。」
「そうなんだ…、それにしても俺達の結婚式に出て下さった方々が、今や総理大臣と市長だなんて、不思議な気分だな。
そう言えば、琴乃は慶次さんの番組見てるって言ってたけど…。」
「うん、孝雄にも見て欲しいな、ビデオには録ってあるのよ。」
「真面目な番組なんだろ。」
「でも、この子が生まれたら、二人で育てて行くのよね。
その時の参考になることばかりの番組なんだから。」
「教育に関する番組か…、俺も父親になるんだな…。
でも、子育てって、もちろん初めてだから…。」
「慶次さんの番組はね、毎回色々な話題が出てくるのよ。
乳児期の医療に関することだったり、中学生の部活動についてだったり、昨日は小学校低学年の学習についてだったわ。」
「へー、どんな内容だったの。」
「低学年の学習で大切なことは、それぞれの教科を好きになることなんだって。
計算でミスが多かろうが、理解が遅かろうがそんなことはどうだっていいそうよ。
子ども達の発達や能力は個人差が有るのだから他の子と比べる必要もないわけ。」
「俺は算数苦手だったからな~、点数が悪いと怒られるけど自分は間違えようと思ってやってる訳じゃないから嫌だったな。
だから余計嫌いになってしまった気がする。」
「そっか、慶次さんもね成績が悪くても好きな教科なら、その子なりにプラスになるっておっしゃってたわ。
そうそう、宿題の平等性なんてことも話してみえたのよ。」
「平等性?」
「学校では平等という観点から、子ども達に出す宿題の量はみんな同じということが一般的でしょ。
でもね、同じ量でも十分で終わらせることの出来る子もいれば、一時間かかっても終わらない子もいるのが現実なんだって、はたしてこの差を平等と言えるのかって。
そんなこと、私、考えたこともなかった。」
「俺はやらない派だったけどね。」
「はは、算数が苦手で宿題もやらなかった子が、大きくなって何人ものご老人にかわいがっていただける素敵な大人になったわけね。
ふふ、慶次さんはね、子どもの頃に必要なことは、生きていく力を身に付けることなんだって。
生きていく力と言っても色々だから、学校の教科書だけではだめってね。」
「ふ~ん、そういえば権じい学園の子ども達は色んな事をしてるな。
自分達の畑もあるし、えーとビオトープて言うんだっけ、休耕田を水生生物観察用の池と流れを組み合わせたおしゃれな公園に変えたりとか。
農学部の学生とかも手伝って、年長の子が小さい子の面倒をみながら作業してたよ。
大変な作業もあったみたいけど、皆楽しそうにやってたな。」
「そんな経験を通して教科書では得られないことを身に付けていくということかしら…。
そう言えばビオトープの周りって何時もきれいって言うか、だんだんきれいになってきてない?」
「はは、ビオトープの中は勝手に手を加える訳にはいかないけど、周りならきれいにしても良いだろ。」
「あ~、孝雄がやってたのか。」
「それがね、最初はこっそりやってたんだよ、でも、それを子ども達に見られてしまってな。」
「うん。」
「子ども達が、ぼく達もやろうって言い始めてね、誰が強制した訳でもない、お願いした訳でもないのに手伝ってくれるようになったのさ。
それが、子ども達の間に広がってね、今では権じい学園生徒会に権じい村改造担当役員までできて…。
学園の生徒達、村の人達や大学生達も巻き込んで、自分達の村をもっと綺麗な暖かい村にするんだって感じになってきてるんだよ。」
「へ~、知らなかった。」
「基本構想が出来たらアンケート調査をするそうでね。」
「ふ~ん、本格的なのね。」
「ああ、彼等なりの権じいの村プロジェクト、スタートという感じかな。
生徒会役員の子が言ってたよ。
このプロジェクトによって、大人も子どもも関係なく、自分達の手で自分達の住む村をより良いものに変えていく、そんなモデルケースにしたい、これこそが慶次さんの描いている夢そのものだと思うからって。」
「すごい、慶次さんの思いはしっかり子ども達へ届いているのね。」
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