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変革-6 [権じいの村-12]

「…、では、実際にどんな感じなのか、今日は地元の主婦、小栗さんに教えていただきます。
小栗さんよろしくお願いします。」
「はい、まずは協力店へ行きますね。
協力店はこの市内に沢山有るのですが、今日は私のお勧めパン屋さん、ベイカリー風波へ行きましょう。」
「協力店の業種は色々なのですか?」
「はい、飲食業、美容室、雑貨、衣類、様々な業種からの参加が有ります。
基本的に小規模店舗のみになっていますけど…。
さあ、ここです。
ちょっと買い物しますね。」
「はい。」

「こんにちは。」
「いらっしゃ~い。」
「うわ~、おいしそうな、いい香りですね~。」
「おいしそう、じゃなくて、おいしいんですよ。」

「では、レジへ行きますか。
店長さん、宵越し千円、十枚も、お願いね。」
「はい、有難うございます。
開店十周年記念、百枚限定の五十チャレンジ券も一枚入れておきますね」
「五十チャレンジですか、達成できるといいな~。」
「宣伝、お願いしますね。」
「はい、もちろん。」
「今日は合わせて一万二千百六円、端数はおまけということで、一万二千円お願いします。」
「はい、ありがとう。」
「調度頂きます、ありがとうございました~。」

「えっと…。」
「すぐ、そこに素敵なカフェがあるの、そこで説明してあげるわ。」
「は、はい。」

「宵越しの金は持たねえっ! って企画ではね、まず協力店が特別なお金を用意することから始まるの。
ほら、日本銀行券の代わりにベイカリー風波券ってなってるでしょ。
これは、勝手に作ってる訳じゃなくて、この企画を運営している市役所の商工課で印刷とか管理しててね、どれぐらい動いているかのデータも取っているの、後で寄りましょうね。」
「はい。」
「ゲームはスターターが宵越し券を協力店で現金と交換することから始まります。
そう、私がベイカリー風波券を手に入れてスターターになった訳です。」
「それにしても、普通のお札とはほど遠いですね。
コメント欄があって…、日付と時間を入れてサインをする表が…。」
「ふふ、ではスターターのコメント欄に書き込みますね。
まずは、五十チャレンジ券から…、え~っと…、ベイカリー風波のパンはおいしいですよ、皆さんに知って欲しいから、エンドは移住者関連になると嬉しいかな、よろしくね、っと。」
「コメントでお店の宣伝ですか?」
「はい、宣伝でなくてもいいのですけどね、後で色々なコメントを紹介させていただきますよ。
マスター、お会計先にお願いね。」
「はい、ということは宵越しですね。
千二百円お願いします。」
「はい、ベイカリー風波券で千円と二百円ね。」
「おっ、風波さん、五十チャレンジですか、この近所では初ですね、これは達成させたいですね。」
「よろしくね。」
「はい、日付と時間とサイン、確認して下さいね。」
「はい。」

「まいど~!」
「おお、誠一くんか、何時も有難うな、今日は忙しいかい?」
「それ程でも有りませんよ、マスター、一軒配達したら昼休みってとこです。」
「じゃあ今日の支払いは宵越し券が千円混ざってもいいかな?」
「全然問題有りません、千円なら昼飯前に自分の買い物で使っちゃいますよ。」
「じゃあ頼むよ、何時もありがとうな。」
「おっ、五十チャレンジですか、ここに俺のはんこが残せて達成できたら嬉しいかもな。
ベイカリー風波か…、前は通るけど買ったことなかった…。
こういう太っ腹な奴の店なら一回寄ってみるかな。」
「おう、私の知り合いでもあるんだよ、よろしくな。」
「はい、有難うございました~。」

「小栗さんの使ったベイカリー風波券が、あっという間に出ていきましたね。」
「はい、五十チャレンジは最近出始めた特別な物なのですけどね。
我らが総理大臣白川慶次発案の、宵越しの金は持たねえっ! って企画には色々な目的が有るのです。
ベースは消費拡大なんですけどね、これは当初から期待薄です。
でも、私達がお金の流れを考えるきっかけとなること、そして自分の為でなく経済的弱者への支援という心の啓発という面ではずいぶんな成果が上がっている様な気がします。」
「ベイカリー風波では小栗さんにおまけをしてくれましたが。」
「それだけの宣伝効果を期待して下さったのです。
宵越し券の基本は八日以内で十回、使われることです。
八日以内に十人の手を回わった千円券は、発行元で千五十円分の買い物ができます。
二十チャレンジの場合、八日以内に二十人の手を回わって、発行元で千百円分の買い物ができます。」
「と、いうことは得するのは最後の人ってことなのですか?」
「はい、自分のためではなく他人の為に使うのです。」
「あっ、五十チャレンジということは八日以内に五十人ですか…、もし、八日以内に五十人の手を回らなかったら?」
「そのまま千円券として使えます。」
「でも受け取るのは商売をやっている人たちばかりになりませんか?」
「お釣りとしても使えるんですよ。」
「そっか、でも普通のやりとりと違って時間がかかりますよね。」
「はい、ですからレジが混んでいる様な店では使わないことになっているんです。」
「なるほど…。」
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