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変革-3 [権じいの村-12]

「わ~、久しぶりに来たら、公園が綺麗になってる。」
「ほんとだ、前に来た時はホームレスが何人も生活していて、公園なんて呼べる代物じゃなかったよな。」
「慶次さんの決断、ホームレスの人達の為に多額の予算を使うことに対して反対する声もあったけど…、結果この素敵な公園がこの街に存在することになったのね。」
「この公園なら仕事関係で外国から迎える客人にも安心して見せられる…、いや、見てもらいたいよ。」

「あっ、掃除をしてる人が…、星空の会の人ね…、ごめん、ちょっと取材してくる。」
「ああ、でも失礼のないようにな。」
「うん。」

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「お仕事中すいません、私、毎朝新聞の記者で相模と申します。
少し取材させていただいてよろしいですか?」
「ええよ。」
「えっと、白川総理が色々な反対意見を跳ね除けて実現した、星空の会なのですけど、実際その会員となってみていかがですか?」
「う~ん、未だに戸惑うこともあるけんどな…、まあ人間らしい生活がでけるようになった気がするわ。」
「充分な支援は行われているのでしょうか?」
「この公園を見れば分かると思うけんどな、皆に不満があったらこんなに綺麗な公園にはなっとらんな。」
「そうなんですか…。」
「え~っと、俺らの仲間はな馬鹿ばっかじゃないんだぞ。
お~い、亀ちゃん、出番だ~。」

「えっと、亀さん…。」
「気軽に亀ちゃんと呼んで下さい。」
「は、はい、えっと、星空の会はいかがですか。」
「すごく思い切った、でも効果的な取り組みだと思います。
自分も色々なことが面倒になって路上生活をしてましたけど、ちょっとやり直してみようかという気になりましたから。」
「そうなんですか。」
「この活動は、単にホームレスの為にお金を使うということではないのです。
そこから、色々な波及効果が生まれる様に考えられているんです。
これには私も驚きました。
我々は家賃を払う代わりに自分の出来る範囲での掃除を義務付けられています。
まあ、ほとんどやんない奴もいますけどね。
でも、それによって街が綺麗になりました。
ダンボールやビニールシートの家もなくなりましたからね。
誰の世話にもならん、なんて言ってた奴も自分だけ取り残された気になったのか、ここから居なくなりましたから。
そして、公園を通る人の表情がずいぶん明るくなりました。」
「はい、そうですよね、私もここを通る時は、憂鬱な気持ちになってましたから。」
「慶次さん達は、そんなことも計算に入れて取り組んでいるのだと思います。
たぶん、犯罪の発生件数も減るんじゃないですか。
経済波及効果も…、ご存知でしたか、私達の為に使われるお金がより有効に経済効果を生む様に工夫されていることを。」
「えっ、どういうことなんですか?」
「スタッフから聞いたことなんですけどね、全国のホームレスはこの取り組みが始まった頃、一万数千人とか二万人を越えてるなんて言われていたんです。
ですから衣料品の支給だけでもずいぶんな額になってしまう訳です。
で、納入業者を選ぶ時に、特別条件付入札会という名目で実際には話し合いの場が持たれたそうなんです。」
「話し合いって談合ですか…?」
「そうですね、ある意味談合みたいなことなのですが、今回の実験的な取り組みを行う為に、特別な法律も通して…、慶次さんはこういったことの為に政権政党を目指されたんですね…。
入札も制度的に問題がないとは言えませんから色々検討中らしいですよ。

で、その条件を聞いて驚きました。
基本的にメーカー直で受けて、中間に商社などが介入しないこと。
この仕事を受注できたら、倒産しないで済むメーカーが優先。
受注した会社は、その利益を必ず社員に還元すること。
そして強制ではないとしながら、地元社会への貢献、大学関係者の調査研究対象になるということ。」
「えっ? 安くとかそういった条件ではないのですか?」
「安くではなく、適正価格で納入してもらうことによって、会社にも社員にも適正な利益を得てもらう。
その代わり、利益還元の恩恵を受けた社員の方々には、その増えた分は極力、貯蓄ではなく消費に回してもらう。
今時、銀行も貸し渋ってますから、貯蓄してしまうと経済効果は期待できませんからね。」
「はい…。」
「とにかく、単なるホームレス支援ではなく、中小企業の支援も兼ねているということです。
話し合いによって受注を辞退した会社も、大学関係者が今後の生産体制の見直しとかを手伝ったりしているそうです。」
「私も新聞記者ですから色々な情報は入れてたつもりでしたが、経済関係まで目が届いていませんでした。
もう一度調べ直してみます。」
「うん、それにしても白川政権はすごいと思う。
選挙の時は、実際にどれだけことがことが実現できるのか疑問だったけど…、最近は、自分が日本人で良かったと思える様になってきたよ。
それでね、私達の中にも、何かできないか考え始めているグループも出来てきてさ。
会社勤めは無理だけど、まる一日働くのは無理だけど、でも何か出来ないかなってね。」
「そうなんですか…、それにしても、えっと、亀ちゃん…、って、とても路上生活者だったなんて思えないのですけど…。」
「はは、以前は銀行に勤めてまして…、まあ色々有りましてね。」
「再就職とかはされないのですか?」
「決心しましたよ、しばらくは全く考えてなかったのですけどね、星空の会の職員になります。
次の面接で職種とか決定なんです。
星空の会は雇用の場の確保という意味合いもあるんですよ。」
「う~ん、そうですか…、もっと詳しく調べてきちんとした形で記事に…、後日、またお話しをお聞かせ願えますか?」
「もちろんいいですよ。」
「えっと連絡先は?」
「星空の会、橋田支部へお願いします。
電話番号は…。」

「今日は有難うございました。」
「いえいえ、職員になったら、こういったことも仕事の内になりますから。」
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