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変革-2 [権じいの村-12]

「竹やんは掃除、ほんとに熱心だな、実は結構真面目だったということか。」
「はは、家賃沢山払っとるぞ。」
「でも、どうしてそんなにがんばるんだい、適当にやってる奴も多いのにさ。」
「そりゃ、住むとこも、着る物も、食事だって…、こんなに良くしてもらって…、いい加減な生活してたらバチがあたるぞ。
俺は自分を完全にあきらめていたけど、もう一度って気になってさ。
まずは、家賃ぐらいしっかり払えんとな。
そう言う、松じいだって結構がんばってるじゃないのか。」
「はは、でもわしはもう歳じゃからな、疲れん程度の暇つぶし程度…、でもそれで良いそうでな。」
「確かに色々強制されたら、金がない代わりに自由に生活してきた俺らにとっては苦痛だからな。」
「それでも、がんばる竹やんはえらいもんだ。」
「そんなんじゃないよ、最初は戸惑いもあったさ。
掃除なんて、長いことやってなかったしな。
でもやり始めたら、結構気持ち良かったんだ。
綺麗にするって…、汚れまくっていた自分もちょっとましになれた様な気がしてな。」
「そういうもんか…。」
「で、真面目に掃除してると道行く人たちが、お疲れ様です、とか、お早うございます、とか声をかけてくれるんだ。
公園で寝てた頃は、声を掛けられると言ったら、あっちへ行け! ぐらいだったからな。
それだけじゃないんだぞ、毎日、お掃除有難うございます、お茶でも飲んで下さいって五百円くれる人がいたり、掃除の途中で休憩してるとお茶とお菓子を差し入れてくれる人がいたり、子どもたちもあいさつしていってくれるんだ。」
「そうか、前とは全然違う…、竹やんのことを見てくれている人は、見てくれてんだな…。」
「松じい達はそんな経験ないの?」
「はは、そんなに真面目にもやってないからな。」
「松じいはともかく、まだ若い連中は真面目にがんばったら良いのに。」
「なかなか変われんもんだぞ。」
「ふ~ん、そうすると、俺がここの卒業第一号になるのかな。」
「えっ、卒業?」
「ちゃんと自分でアパートを借りて自立するつもりなんだ。」
「でも、職とかは?」
「星空の会のスタッフが検討してくれているんだ。
まあ掃除の仕事なんだけどな。」
「うん。」
「個人のお宅の庭掃除を一日に何件か請け負うとか、会社の掃除を請け負う、もしくはビル管理会社に雇われて掃除の仕事をする。」
「ということは、竹やん、ご指名かい。」
「うん、でも俺だけじゃないらしい、真面目にやってんのは。
で、星空の会のスタッフとしては、雇われるよりは請負の方が面白いかもなんて話していた。」
「う~ん、家賃は街の掃除なんて…、よー解らんかったけど…。」
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