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変革-1 [権じいの村-12]

「おい、何やらとんでもないことになったな。」
「まだ信じられんが…、とにもかくにも風呂へ入ってさっぱりした所へ、下着やら制服まで支給されちまって…。」
「お前、似合っとるな。」
「そうか~、ははは。
ついでに髪の毛もばっさり切ってみたけど。」
「前よしかはましだな…。」
「それにしてもよ、住む所を用意してくれるというか、自分達で建てるなんて、思いもせなんだな。」
「ちゃんと給料もくれるっていうから、太っ腹だ。」
「家賃は街の掃除を自分の出来る範囲で、なんてな…。」
「お前はやらなさそうだな。」
はは、でも家の前のごみを一個拾うだけでも良いんだろ。」
「まあ、気持ちの問題なんだろうな。」
ここは人数も多いから風呂も大きめのが併設されるそうだよ。
何でも、大学生達が考えた薪発電もするらしい。」
「どうなんだろう、俺、ボイラーの資格持っているんだけどな、役に立たないのかな。」
「へ~、人は見かけによらないね。」
「そうだ、住民票も青空公園から移さなきゃな。」
「はははダンボールにマジックで書いた住民票をか? はは少しは雇ってもらいやすくなるのかな。」
「お、おい、始まるみたいだぞ…。」

「それでは星空の会、説明会を始めます。
すでに一通りの説明は聞いておられると思いますが、確認の為にもう一度説明させていただきます。
まず、今回のホームレス支援プロジェクトの費用は、国、県や市などの地方公共団体が…、つまり税金から支出されています。
それと、多くの市民の方々から寄付もいただいています。
できれば、このことを頭に置いて、皆さんには社会復帰を目指していただきたいと思っています。
ただ、様々な理由で、普通の職場では働けない方もいらっしゃると思います。
そんな方々とは、何が出来るかという相談をさせていただくつもりです。
また、今は何もしたくないということであれば、そうですね、家賃代わりの街の掃除だけで構いません。
ただ、仮設住宅には風呂も併設されますので、身奇麗にしていただけると幸いです。

住民票は建設される仮設住宅へ移して下さい。
それと同時に生活保護の申請なども受け付けていきます。
星空の会は三ヶ月毎の更新となります。
更新時に面接をして生活状況、健康状況などを確認させていただきます。
また、この時、違う住居への移動をお願いすることも有ります。
三ヶ月程田舎暮らしを体験してみませんかといった、提案もさせていただくつもりです。
ここは皆さんの永住の地とはならないことを、ご理解いただけたら幸いです。
また、更新時以外でも、係りの者が声をお掛けすると思いますので、相談事などありましたら気軽にどうぞ。
そうですね、解らないこととかあったら、私達スタッフにどんどん聞いて下さい。
こうして欲しい、といった要望にもできる範囲でお応えしていきたいと思っています。
…、ここまでで何か質問とかありますか?」

「素朴な疑問だけど、ええか?」
「はい、どうぞ。」
「どうしてまた、急にわしらの面倒をみようなんて…、お国が?」
「この国の政治が変わったのです。
政権政党が新党宇宙になり、内閣総理大臣が白川慶次に代わったからです。
皆さんの為の仮設住宅を作りましょう、なんて今までの政党では有り得なかったことなのですが…、もし有ったとしたとしても、その建設費は政治家に取り入っている業者に流れるだけに過ぎなかったでしょう。
しかし白川先生は、皆さんに対する支援の為に支出するなら、より効果的な支援をと話されまして、今回のような、そうですね、ささやかかもしれませんが雇用の場の創設となったのです。」
「でも、前に拾って読んだ週刊誌には、ろくな奴じゃないって感じで書かれてたけどな、あの白川って奴。」
「はは、その週刊誌は、でたらめ書いてごめんなさいってことになって、今では白川総理を応援する記事ばかりになってるぞ、お前も読むならもっと新しいのを拾って読めよな。」
「ははは。」
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