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胎動-5 [権じいの村-10]

「市長、体調の方はどうなんです?」
「はは、慶次、まあ年寄りじゃからあちこち悪いがいたって元気じゃよ。
すまんかったな、お前さん方も忙しいとは解っているんじゃが、呼びつけてしまってな。」
「そんなお気遣いは無用ですよ。」
「ちょっとな、タイミングということを考えておってな。」
「はい。」
「今、震災復興の形ができたとこだろ。」
「はい、復興の大きな道筋は出来てます、まあ細かいところではまだまだ色々動いていますけどね。」
「うん、でな、わしの引退のタイミングなんじゃが、慶次、今っていうのはどうじゃ?」
「う~ん、どうなんでしょう…、市長はもう少し現職にと考えて自分は動いてきたのですけど…。」
「わしが動けんくなってから高柳くんにというよりは、まだ動ける今、震災からの復興で高柳くんの知名度が上がっている今、まあ、わしが震災復興から表向き手を引くことになるから、ちょっと批判を受けるかもしれないが、でもタイミングとしては悪くないと思うんじゃ。」
「でも、まだお元気なのに。」
「高柳くん、前にも話したけど、市長になったら面倒なことも色々出てくるぞ、わしの目の黒い内ならそんなことも手助けできる、わしの後援会から反対する声は一つもなかったぞ。
これは、お前たちの力だ、皆…、はは、わしも含めてな、お前さんたちを担ぎ上げたいって思っているるんじゃよ。」
「う~ん、高柳さん、動きますか?」
「そうですね、震災復興ボランテアセンターの方は、特に、問題もありませんから…、慶次さんのゴーサインで行けますよ。」
「よし、市長、お願いします、俺たち、この地のために精一杯がんばりますから。」
「はは、この地のためにがんばるのは高柳くんだけでいいぞ、慶次はわしらの夢プロジェクトの成功に向けて動いてもらわんとな。」
「はい。」
「よし、そうとなったら隣の部屋に酒とか用意してあるから乾杯といくか。」

「わしらの夢に乾杯。」
「乾杯。」
「乾杯。」

「なあ、桃園の誓いって知ってるか?」
「三国志ですね。」
「あの時の三人の気持ちってこんな感じだったのかな。」
「そうかもしれませんね、自分は末弟ですから張飛ってとこですか。」
「でも年齢は高柳さんの方が上ですから…。」
「次兄はわしだな。」
「えっ? そんな…、市長…。」
「長兄はやはり慶次だよ、年齢は関係なく慶次の夢に乗ったのはわしたちだから、そして…、残り少ないかもしれんがわしの残りの人生で出来る限りのことを…、そうだな、この歳になってお前さんたち若者から夢をもらえるなんて思ってもいなかった。」
「ありがとうございます…。」
「慶次たちと義兄弟の契りが結べたら嬉しいんじゃが。」
「はい、自分も嬉しいです、でも長兄というのは…。」
「はは、弟にこの市の元市長を持つことは、これからの慶次さんの活動にプラスになると思いますよ、私もがんばって次期市長にとなれば色々プラスになると思います。」
「高柳の言う通りじゃ、慶次腹を括れ。」
「はい…。」
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