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胎動-4 [権じいの村-10]

「武田、あんまし無理すんなよ、あせらず復興して行こうぜ。」
「はは、大丈夫だよ。」
「でも、どうして、そんなにがんばるんだ?」
「うん、子どもの頃にな、阪神・淡路大震災ってあったじゃないか。」
「ああ、うちも揺れたかな…、でも自分たちが暮らしてたとこでは被害がなかったから…。」
「俺は、親戚がな…、まあ遠い親戚ってことだったらしいけど…。」
「ごめん知らなかったよ。」
「いや、それより聞いて欲しいかも、俺も全然覚えてないその人は地震後の生活中に亡くなったんだ。
親父はちょっとショックだったらしい、まあ遠縁ということもあって特別な援助を考えてもいなかったそうなんだ。
それだけにそのことを悔いていてね。」
「だから…。」
「震災で寂しい思いをする人が少しでも減らせれたら、親父からはどうせ不況なんだから留年したって構わない、出来ることを力いっぱいやってこいって言葉をもらってきてるよ。」
「そうか、武田んちは結構余裕があるんだな…、うちはボランテアやってる余裕なんてないぐらいだけど…。」
「いっそ、ここで働いたらどう?」
「えっ?」
「もともとプロジェクト関連で人手が欲しかったとこへ、今回の地震という感じでここでの求人は少なくないんだぞ。」
「考えてもいなかった。」
「俺はここで就職するかもしれない、小さい会社だけどもう三社から誘いを受けてるよ。」
「そうなんだ…、武田みたいに真面目に働く男なら雇いたいだろうしな。」
「いやいや、居酒屋で知り合った社長たちに誘われてるのさ。」
「えっ…。」
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