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香織-6 [権じいの村-3]

「香織さん、どうでした。」
「もうびっくりです、住む人がいなくなって朽ち果てたような家を調べてる人がいたり、虫のことを調べてる人がいたり…。
慶次さん、大学って色々なことを研究してるのですね。」
「はは、今日見てもらったのはほんの一部だけどね。」
「そうなんですか。
もう一つびっくりしたのは、違う大学、違う学部の人が協力しあってることです。」
「うん、これはすごく珍しいことなんだよ、本格的に動き出した時、学部を越えての大学間交流の規模は他に例をみないものになるだろうな。」
「大学ってすごく専門的に研究する所だと思ってました。」
「実際その通りだよ、一つのことを突き詰めて行くって感じかな。
でもね、そればかりだと見落としが出てくることもあるのさ。
すごく便利な物を生み出したつもりが公害の元になったり、すごく作業効率のいいシステムを作り出したつもりが働く人にとってストレスの大きいものだったり。
そんなことが実際色々あったのさ。
それで、専門的な研究も必要だけど、違った角度から、色々な視点で、その研究を検証できるような形が作れないかと思ってね。」
「何か難しい話しです。」

「はは、そうだな…、交通システムのことは聞いてくれたかな。」
「はい。」
「そのシステムをここで実際に使ってみることで、色々な問題点とか可能性とかが見えてくると思ってるんだよ。
利用者はほとんどが関係者だから気付いたことはすぐ伝えてもらえるだろうからね。
もちろん村の人たちにも利用してもらえたら問題点の見落としも少なくなると思ってるけど。
ここで改良を加えて問題の少ないシステムとして運用できそうなら、どこかの自治体が導入するかもしれないんだ。
でもね、もしここでの実験的運用がなかったらどうなると思う?」
「え~、よく解りません。」
「机の上で考え生み出されたものを、自治体がそのまま導入ということも有り得るんだよ。
そして運用が始まってから大きな問題に気付くということもね。
今回のシステムは比較的導入しやすいから起こりうることなんだ。」
「そっか、ある研究室で考えられたものを、みんなで見直してから実用化するのと、いきなり実用化という違いなんですね。」
「そういうことさ。」
「ここは車のある家ばかりじゃないから、下の町まですらめったに出ない人も結構いると思うんです。
バスが使えるようになったら、みんな喜んで利用するんじゃないかしら。」
「うん、調査の結果もそう出てるよ。」




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