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香織-2 [権じいの村-3]

「ねえ香織さん、明日の予定は?」
「みなさんの食事の用意と掃除かな、明後日には帰…。
帰るって変ですよね、ここが自分の村なのに…。」
「出稼ぎに行くんですよね。」
「はは、慶次さんったら。」

「明日は食事の用意とかじゃなくて、みんなが何をしてるか見てくれないかな。
食事当番、掃除当番も、ちゃんといるからさ。」
「でも、私なんか…、おじゃまじゃないかしら。」
「じゃまなわけないですよ~、明日はおれたちと。」
「おいおい抜け駆けはよせよ、健吾。」
「はは、大歓迎ということだな。
見学の案内は…、真帆、いいかい?」
「いいわよ、私も現時点での状況を把握しておきたかったから。
みんな、明日のスケジュールに変更はないわね。」
「はい。」

「あっ、のろしが上がりましたよ。」
「えっ、のろし?」
「食事の用意ができたって合図なんです。」
「はは、なるほどな…、のろしなんて大昔のものだと思っていたけど…、面白いな。」
「でも本部に背中を向けていたら気づかないかも。」
「まさか、育ち盛りが何人もいるんですよ。
誰かさんなんかずっと本部の方を見てたりして。」
「えっ? 誰かさんって、おれのこと?」
「違ったかな、食いしん坊さん。」
「ははは。」

「じゃあ行こうか。」
「はい。」

「慶次さん通信手段の方は今のままなのですか?」
「うん、しばらくは無線中心だな。
まぁ、みんなが地元の方と親しくなれば固定電話をお借りして、ということもありだけど。
昨日も、源太郎さん…、君の家で一回お借りしたよ。」
「やはり携帯は無理ですか?」
「いや、そうでもないけど…、携帯の使えない環境ってのも研究対象の一つになっていてね。
そっちの研究がある程度まとまるまでは今のままかな。
ただね、携帯が使えないことを楽しんでいる子も結構いてね。
友達がいなくなる~、なんて、冗談っぽく言いながら手紙を書いてる子もいるし。」
「手紙かぁ~、ぜんぜん書いたことないです、私。」
「仲間がここにいるから必要ないじゃん、って言ってる子もいるよ。」
「そうなんですか…。」
「光ケーブルを引っ張ってくる予定はあるけどね。」
「えっ? ここまで? 簡単なんですか?」
「ケーブルの敷設方法とかの研究をしてる研究室、ケーブルそのものを研究してる研究室、と電話会社の研究所が共同でやってくれる。」
「でも、費用は…。」
「全部会社が負担してくれることになってるよ。」
「太っ腹~。」
「会社としても色々メリットがあるのさ。」
「メリットですか。」
「大学の研究室と良好な関係を保っていれば研究面のメリットがあるし、優秀な学生を見つけやすくなるし、ここでは光回線を利用した色々な実験もする予定だからね。
樋口くんっているでしょ。」
「はい。」
「彼は、独り暮らしのご老人が発作とかのトラブルに見舞われた時の緊急連絡システムの研究をしてるんだけど、光回線を利用して、緊急時以外でも、そのシステムが活用できないかって模索してるよ。
とにかく簡単で分かりやすくするということが、一番難しいそうだ。」
「そういうものなんですか…。」

「研究者にとってネットは不可欠だって理解してもらってるから意外と早く作業してもらえそうなんだ。」
「う~ん。」
「どうしたの?」
「じいちゃんちにパソコン、置こうかな~。」



So-netの超高速な光ファイバがそろそろお手頃に!

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