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調査-9 [権じいの村-2]

「みなさん、今日はほんとうにお疲れさまでした。
ごちそうを目の前にして、長々とお話しするのも何ですから、一つだけ報告させてもらって乾杯とします。
全員、揃ってる?」
「はい。」
「今回の調査過程で偶然見つかった次三郎さんは、みんなのおかげで容態も安定、今はこの近くの親族の方のところで休んでおられます。
みんなありがとう。」

「わお~!」
「よかった~。」
「このみのお手柄ね。」

「と、いうことでまずは、このみちゃんに乾杯!」
「かんぱ~い!」

「ほら、このみ、ごあいさつなさいよ。」
「へ~、そんなこと言われても私…。」
「このみちゃんが、きちんと次三郎さんと向き合ってくれたから、片桐先生も気づかれたのだよ。」
「白川先生…、でもお医者さんが調査メンバーに入っていらしたなんて思ってもいませんでした…。」
「はは、君たち山岸先生のとこの1,2年生には、ただの調査と思って欲しかったから…、色々内緒にしてたんだ。」
「え~。」
「調査前に調査員が色々知ってしまうと調査の精度を落とすこともあるんだよ、興味があったら山岸先生の講義を受けるといいな。」
「はい…。」

「片桐先生は僻地医療の現状という観点からこの調査に参加して下さったんだ。
調査項目にも、健康に関する項目が幾つかあったろ。」
「はい。」
「その分析に来た筈の、裕子ちゃんと麗佳ちゃんにも今回はお世話になってしまった、二人ともありがとうね。」
「ふふ、当たり前のことですわ、ね、麗佳。」
「うん、分析が、突然、実習になったって程度だから…、慶次さん、逆に過疎の村における医療の問題を肌で感じ取った気分です、ほんとに来て良かったって思ってます。」
「うん、ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいよ。」
「ふふ、慶次、村の人たちからはすごく感謝されて、これからの活動が楽になるかもしれないわよ。」
「う~ん偶然とはいえ、次三郎さんに感謝しなくちゃいけないのかもしれないか…、でも胃が痛くなったからなぁ~。」
「はは、私は工学部で専門外ですけど、ほんとに診療所が遠く感じましたよ、過疎地の現状を突きつけられた思いです。」
「中根さんにも、お世話になりました。」
「な~に、私の出番はこれからですからね、あの時は暇してましたから。」

「白川先生、そう言えば今回の調査って工学部とかの人も…。」
「はは、理香ちゃんもようやく気づいたか。」
「何か、全然わかってませ~ん。」
「今回、君たちにお願いしたのは人の調査なんだけど、それだけじゃないんだ。」
「どういうことなんですか?」
「工学部、建築科は建物や宅地の調査の後、建物の補修や実際に家を建てることも検討してる。
土木科は道路や水路とかの調査の後、ここの自然にあった道路整備などの研究や実習を検討中。
農学部の研究室は耕作地の調査、森の調査、その後、ここの環境における農業実習なんてことを模索。
全く別々の研究ではなくて、研究室を越えて意見交換をしていこうということになってる。
片桐先生のとこは僻地医療の問題を中心にした研究の場としてここを拠点と。
情報通信の立場から、僻地における緊急時の情報伝達の実験的研究の場として参加してくれてる研究室もあるし。
老人福祉の観点から問題点を探ろうという研究室も参加してれば…。
こういった研究者たちと村の人たちとの結びつきを考えてる、人間関係学。
そして多くの人が係わることになるから組織という観点からの参加もある。
行政との問題もあるしね。
とにかく、色んなことをこの過疎の村に集約して研究していこうって実験的プロジェクトのスタートに君たちの力を借りたってとこかな。」

「あれっ、里美、どうしたの?」
「理香…、わたしさ…、こんなすごいことだなんて分かってなくて…、このみは次三郎さんとしっかり向き合っていたのに…、わたし…、すごくいい加減で、早く終わらせれば良いってぐらいにしか考えてなかって…。」
「里美ちゃん、何事も経験ってことよ、これからのプラスにできれば何の問題もないのよ。」
「山岸先生…。」




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