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先崎浩士-3 [Lento 5,秋]

話し声がやみ、やわらかなピアノの音色がホールを包み込む。
ピアノソロに編曲された、くるみ割り人形、花のワルツが聴衆の心を癒す。

先崎とて音楽の道を目指す者、今まで色々なピアニストの演奏を聴いてきた。
もちろん一流のだ。
今までこんな演奏聴いたことがあるか?
と、自問してみる。
答えはどう考えてもNoだ。
ずっとこのピアノの世界に浸っていたい…。
今までこんな気持ちになったことはなかった。

ホールでは食後のデザートを配り始めていた。
演奏に合わせて数人の女の子たちが客たちのテーブルを回っていく。
三拍子で踊るように。
そして、彼女たちは、曲に合わせ同時に皿をテーブルに置く。
踊るように移動してまた同時に皿をテーブルに置く。
先崎はぼんやりと見とれていた。
不思議な光景がしばらく続く。

曲は白鳥の湖に変わる。

ふと我に返る先崎。
自分もこの絵の様な光景の一部になれるだろうか、いや自分もこのLentoの一部になりたい。
そのためには…、色々な思いが彼の頭の中をかけめぐっていた。



 チャイコフスキー くるみ割り人形
 チャイコフスキー 白鳥の湖

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