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先崎浩士-2 [Lento 5,秋]

先崎は中学生の頃から幾つものコンクールで賞を取ってきた。
その自信を持ってLentoのオーデションを通った。
それだけに、この経験はかなり彼の自尊心を傷つけることとなった。
しばらくバイオリンが重かったという。
だが翌週には、またLentoでの演奏が待っていた。

彼は色々迷ったあげくLentoへ足を運んだ。
オーデションに通った後、他の学生の演奏も聴くことを勧められたことを思い出したのだ。
学生演奏家たちはマネージャー初音の許可があればホールで演奏を聴くことができる。
すぐにランチタイム前の演奏から聴くことが許可された先崎は、客席から話し声も聞かれるフルートとピアノのデュエットに少しほっとさせられた気分になった。
普通に上手な学生の演奏だったがプロレベルではなかったからだ。

それとともに初音から「ホール内の観察をするのよ」と、言われたことを思い出す。
客たちは会話をしながらも演奏を聴いている。
オーストリア風の衣装を身にまとった女の子たちは曲に合わせて、客たちの注文に応えている。
自分が演奏した時はホールの女の子の動きを気にもしていなかったから、さぞかし動きづらかったろうと反省もした。

ランチタイムとなって演奏はピアノ三重奏に変わる。
なかなかの演奏だがやはり学生レベルだ。
落ち着いて演奏できれば、自分の方が確実に上だ、と思いながら次回の自分の演奏のことを考えていた。
「初音さんからよ。」
と、言われて運ばれた食事を口にする。
次回は自分本来の演奏をしよう、そう心に誓った時、演奏がピアノソロに変わる。
ホール内の雰囲気が一変した。

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