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先崎浩士-1 [Lento 5,秋]

Lentoのランチタイム前後は客の入れ替え時間になっている。
午前の演奏を聴いて帰る、ランチを済ませてから帰る、ランチ前に来てランチと午後の演奏を聴く、ランチの後で来て午後の演奏を聴く、ランチを挟んで午前午後ずっとというのが客たちの基本パターン。
だから当然ランチタイム前後は人の動きの多い時間帯となる。
そんな時でも学生プレイヤーが演奏している。
静かに演奏を聴いてもらえなくても、学生プレイヤーたちはそれぞれの思いで演奏に取り組む。
一人でもいいから自分の演奏に耳を傾けてもらうんだと、がんばって演奏に熱を入れるチェリストもいれば、学校の課題曲を練習中ってビオラ奏者もいる。
そして、違った形で客に楽しんでもらおうと色々試みているのが、バイオリンの先崎浩士だ。

先崎がLentoで演奏し始めたのは、和音より半年ほど遅い。
彼が初めてLentoで演奏したのはランチタイム前の時間帯だった。
客たちは普通に会話していて自分の演奏が客にどこまで届いているか疑問に思いながらも、彼なりに精一杯バイオリンを弾いたつもりだった。

二度目の演奏はランチタイムの演奏だった。
ランチタイム前の演奏を聴きながら、出番を待つ、この時、同じランチタイム前でも、自分の一回目の演奏時とは全く雰囲気が違うことに気づかされてしまう。
誰も話すことなくピアノに耳を傾けていたのだ。
ホールで働いてる女の子たちもピアノに合わせて動いているが、極力音を出さないよう様に気を配っているような感じで、彼女たち自身ピアノが聴きたいのだと言わんばかりだった。
先崎とて音大生だ、ピアノのレベルの高さにすぐ気づく。
こんなすごいプロがランチタイム前に?
と、彼が思った瞬間そのピアノに合わせ女の子が踊りだす。
その大きく優美な踊りに彼は引き込まれた。
そして飲み込まれた、この次に演奏するのは自分なのだ。

この演奏に負けまいとする気持ちが、力んだ演奏となり…。
客たちはランチタイムの会話を楽しむこととなった。

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