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中村紗枝子と長井祥子-3 [Lento 5,秋]

和音はリクエストに応えてまたピアノを弾き始めていた。
そんな光景を見ながら二人のおしゃべりは続いていた。
「ピアノ以外はどうだったんですか、遊びとか勉強とか。」
「そうね、ピアノばかりだった訳じゃなくて普通の子だったと思うわ、外へ遊びに行くこともあったし、ただ性格がおとなしいと言うか控えめと言うか、友達の多い子じゃなかったわね。
勉強は自分でやる子で、まあ解らないことがあると近所のおじいちゃんの所へ聞きにいったりしてたけど。」
「大好きなおじいちゃんですか?」
「そう、5年生ぐらいから自学自習のコツを色々教えてもらっていてね、おじいちゃんの持論は、塾は時間と金の無駄、だそうで、でも解らない時は早く解決した方が良いから、頼れるおじい様の所へ聞きにおいでとか言ってたそうなの。」
「じゃあお母さんが勉強しなさい、とかいうことは?」
「全くなかったわね。」
「なんて手のかからないお子様だったのでしょう。」
「はは、そうね、でも勉強で驚かされたのは暗記物に関しては和音流暗記法ってのをやっていてね。」
「和音流ですか?」
「まねできる人は少ないかも、例えば中学生の英語だと、教科書を暗記しておくとテストがかなり楽なの、なんて言いながら、教科書見ながらピアノを弾いてたんですよ。」
「えっ?」
「教科書の内容を頭の中でメロディにして一緒に覚えておいて、思い出すときはメロディを鍵にするとか言ってたわね、初めは冗談かと思ってたけど、テストでそれなりの点数を取ってたことを考えると、そういう暗記法もあるのかって、そうね、おじいちゃんは楽しく勉強するということを教えていたみたい。」
「う~ん、何かなあ、俗人の私にはついていけない世界みたいですね。」
「そうよね。」
「そうだ、実は和音のプロフィールを作る時に、ちょっと困ったんです。」
「何か問題でも?」
「特にコンクールとかの賞とか…、あまりなくて、どう飾ろうかと。」
「そうよね、あの子本番に弱いというか、他の子のレベルを考えたら簡単に賞が貰えそうなコンクールでも実力が全然出せなくて、何かコンクールだと思うと力んでしまってたみたい、私がもっとうまくアドバイスできれば良かったんだろうけど、ずいぶん可哀想な思いをさせてしまったわ。」
「そうだったんですか…、で…、和音の子どもの頃のエピソードを、プロフィールに付け加えてみるのも有りかな、なんて、どうでしょうか?」
「私は構いませんよ。」
「じゃあ…、あらっ、梶田先生が呼んでみえますね。」
「行きましょうか。」
「はい、また和音のこと色々教えて下さい。」
「もちろんよ、和音が子どもの頃一番欲しがってのはお姉さんなの、よろしくね。」
「あっ、はい、そうか…。」
「どうかしたの?」
「そうか…、Lentoの白川さんは良く『芸術的な』って言葉使われるんですよ。」
「Lento自体が芸術なんでしょ?」
「はい、私は芸術的な、姉の様なマネージャーを目指してみようかと思います。」

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