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中村紗枝子と長井祥子-1 [Lento 5,秋]

和音の展覧会の絵が終わった後、和音の母、紗枝子と長井祥子は体育館の片隅で立ち話をしていた。
「祥子さん、こんな所にまで来て下さって、ごめんなさいね。」
「いえいえ、私自身まだ和音のことが、しっかり分かっていない気がしていますから、それに良い演奏を聴けて今日来て良かったです。」
「そうね、今日の演奏も良かったわ、あの子…、またレベルが上がった気がするのは、親の何とかかしら。」
「そんなことないですよ、確実に超一流のピアニストとして世界に通用すると思います。
私もピアニストを目指していましたから、それなりに聴く耳も持っているつもりですが…、そうそう前から機会があったらお聞きしたいと思っていたのですが。」
「何でしょう?」
「和音は、小さい頃、どんな練習をしてきたのですか?」
「ふふ、子どもの頃の和音のことね、ちっちゃい頃からピアノが好きでね。」
「ちっちゃい頃って?」
「私もピアノが好きだから、あの子がお腹にいる頃から弾いて聴かせていたの。」
「胎教ですね。」
「そうね、で、生まれてからも、よく子守唄をピアノを弾きながら聴かせていたわ。
で、ようやく立てるかどうかって頃から、やたらピアノに興味を持ってね。
私に抱かれて鍵盤をたたいていたのよ。
今度、その頃の写真を見せするわね。」
「あっ、ぜひお願いします。」
「もちろん、初めの頃は、でたらめだったんだけど、しばらくすると曲になり始めてね。
3つになるか、ならいかの頃には、ちっちゃな指でゆっくりと子守唄を弾いてたわ。」
「天才だったんですね。」
「私も主人も、親バカ全開になりかけたんだけど、主人の父親から『慌てずに、じっくり計画的に才能を伸ばしていきなさい。』というアドバイスがあって…、今思うと身近にそういう人が居てくれたことが、あの子にとってラッキーだったと思うわ。」
「あっ、和音の大好きなおじいちゃんですね、Lentoオーナーの白川さんは、おじいちゃんと似てるって、前に和音から聞いたことがあります。」
「5才ぐらいまでは、とにかく理解できてもできなくて良いから楽譜を前に置いて、色々な曲を私と一緒に弾いてました。
まあ、気づいたら、ひらがなを覚える前に楽譜が読める様になってたわね。」
「小さい頃、ピアノの練習は嫌がらなかったんですか?」
「えっ? 練習? あの子はそんな気持ちでピアノに向かってなかったから、遊びの一つだったんじゃないかしら、ピアノが弾きたくなると勝手に弾いているか私を呼ぶか、ピアノを弾くことはあの子にとって日常であって、私もピアノの練習をしなさいなんて一度も言ったことないですよ。」
「そうですか、私も小さい頃からピアノを習ってましたけど、練習したくない日もあったりして…。」
「妹の絵美が生まれた頃からは、私が用意した楽譜を独りで弾いていることが多くなったんだけど、私に絵美はどんな曲が好きかなぁ~、って聞いてきて、それまでは自分の弾きたい曲を弾くという感じだったのが、まあ、お姉さんになったことによって、聴き手を意識し始めたってことね。
時間があると絵美の為に弾いていたわ。
生まれたばかりで会話のできない妹に話しかける様に。
絵美も和音のピアノが流れてると心地良かったみたいで、手がかからなくて助かったんですよ。」

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