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中村和音第二回定期演奏会-9 [Lento 3,演奏会]

演奏が終わった後のロビーではテレビ局のリポーターが帰り際の客にインタビューする姿が見られた。
演奏について興奮気味に語る年配の男性。
周りは人だかりになっている。
「普段、私たちが聴く演奏といえばCDによる名演奏家の物が多いじゃないですか。」
「たしかにそうですね。」とリポーター。
「ある意味下手な演奏を聴く機会は少ない訳で、私の耳もそれなりに肥えている思うんですよ。」
「かなりのクラシック通なんですね。」
「子どもの情景のCDだって、色々な演奏家のを5本持ってます、でも今日の演奏が最高だと思うんです、世界レベルの演奏家たち以上ですよ、中村和音は。」
拍手が起こる。
拍手はインタビューを受ける男性の言葉に対する共感の意と、今日の演奏会のひと時を共有した連帯感のような空気が生み出したものだろうか。
「その割には、知名度が低くないですか? 私も今回の取材で始めて知りました。」
「あっ、という間に知れ渡りますよ、事務所もそういう体制を整えてますから…、Lentoのサイトをチェックしなきゃだめだな。」
「あ、それ…。」
リポーターが話そうとするところに、若い女性が割り込む。
「真子ちゃん、柳原真子もサイコーだったわ!」
言わないではいられない、そんな雰囲気だ。
同感という感じで拍手がまき起こる。
周りは二人への賛辞を一言、言いたいという人たちで…。

ロビーの片隅では、そんな光景を横目に見ながら、テレビ局の取材責任者、桜庭康平が、和音のマネージャー長井祥子と話をしていた。
「今日は…、実は…、スポンサー関連の紹介で…、上司からの命令で、夕方の情報番組で軽く流すだけのつもりで取材にきたのですが…。」
「すいません、Lentoの常連客がご迷惑をおかけしたのですね。」
「と、とんでもありません、こんなにハイレベルとは思ってもいませんでした。」
少し興奮ぎみに話す、彼もまた、演奏の余韻を引きずっているようだ。
「上司にも話を通して…、どんな形になるか分かりませんが、二人のことを、きちんとした番組の形でも視聴者の方々に紹介させていただけたらと思っています。」
「本当ですか! 有難うございます!」
「つきましては中村和音さんの、今後の取材スケジュールの調整やギャランティのことなど…、長井さんに連絡させていただけばよろしいですよね。」
「は、はい、よろしくお願いします。」
「柳原真子さんに関しては、どなたに?」
「今の所、Lento事務所のマネージャー佐山初音が担当ですが、私で構いません、特に和音と二人での活動に関しては一任されていますので、佐山の方へは私から報告します。」
「分かりました、あと…、プロジェクト和音、プロジェクト真子という言葉を耳にしたのですが…。」
「若い才能ある芸術家たちを、最高の状態で世に送り出したいというプロジェクトです。」
「あの~、そのプロジェクトに私が参加することも可能なのでしょうか?」
「は、はい…、えっ? 本気ですか?」
「本当の力を持っている人をバックアップしていく喜び、それを私も味わいたのですが。」
「もちろん大歓迎だと思います、ちょっと話をしてきますので、また後ほど。」
「はいよろしくお願いします。」

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