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中村和音第二回定期演奏会-6 [Lento 3,演奏会]

「情熱」と名づけられた今回の即興演奏は、和音の力が最大限に生かされた演奏として絶賛されたのはもちろん、真子の評価を一気に高める機会ともなったのだが。
その裏にはこんな打ち合わせがあった。

「最初はベートーベン「熱情」の第三楽章で始まって。」と、和音。
「うん、聴いたことある。」と真子。
「それなりに熱情っぽく演奏した後、ゆったりとした部分が入るの。」
「その心は?」
「情熱を傾ける対象との幸せなひと時という感じね。」
「成る程、愛が深まっちゃうのね…。」
「まぁね~、後は微妙な波乱があってがんがん燃え上がるの。」
「がんがんって? 目一杯行く気?」
「真子も聴いたことのないようなレベルまでやっちゃいたいんだけど。」
「じゃあ私も和音の見たことのない様なレベルまでやるしかないわけね。」
「気合入れて、力一杯踊って何分ぐらい持つ?」
「う~ん、ゆったりの部分にもよるけど、内容と体力、精神力を考えたら…、20分ぐらいが質を落とさない限界かも。」
「了解、終わりは…、そう、ぴたっ、と止めたいわ、一番の盛り上がりから。」
「タイミングはどうするの?」
「ちょっと聴いてみて。」
和音はピアノを弾いてみせる。
低音部から高音部へ向けて一気に駆け上がる。
「本番は全く違うものになってると思うけど、ここで…。」
きっかけを弾いてみせる和音。
「この最後の和音からいち、にっ、さん、で、終わるわ。」
「おっけ~。」

こんな感じの打ち合わせだけでステージに上がってしまうのは、お互いの感性を充分理解し合えているからだろう。
練習? 和音と真子は二人で練習したことは一度もない。
二人で遊びに行くことは良くあるのだが…。


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