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長井祥子と中村和音 [Lento 2,夏]

夏休み、祥子は卒業を待たずに和音のマネージャーを始めることになった。
卒業の目処はたっている。

「和音、当面のスケジュール表作ってみたから目を通しておいてね。」
「はい、祥子先輩。」
「ちょっと待って、先輩はやめてね、祥子でいいわよ。」
「う~ん、そっか、でも…、しばらくは、祥子さん、でいいかしら、マネージャー?」
「まぁいいでしょう、スケジュールは夏休み以降の学校行事とかも考えに入れてあるけど、個人的な予定はまだ考慮してないの、家族旅行とか、彼とのデートとかは早めに教えてね。」
「やっぱり先輩に頼んで正解だったな。」
「えっ?」
「頼りになるし、学校のこととかも詳しいし。」
「おだてても何も出ないわよ、それと恥ずかしい演奏したら私が許さないからね。」
「分かってます。」
「私がピアノあきらめたのあなたのせいなんだからね…、でも和音で良かったわ、思いっきりレベルの違いを見せ付けてくれたから、結構さっぱりピアニストの道におさらばできたのよ。」
「そうだったんですか…、私…、マネージャーお願いして本当に良かったのでしょうか。」
「緑川さんとお話ししてから、自分でも色々考えてみたの、ピアニスト目指していた頃は全く気づかなかったけど、私は裏方の方が向いてるかもって、で、裏方やるなら、表は一流や超一流の方がやりがいがあるでしょう。」
「うっ、一流ですか、プレッシャーですね。」
「何、言ってんのあなたはすでに超一流ですよ、天狗になってはいけないけど少しは自分の力を理解して欲しいわね。」
「でも、Lentoで演奏を始める前、コンクールは何時も予選落ちで…、ピアニストは無理かなぁ~って思ってたんですよ。」
「うそ!」
「うそじゃないですよ、でも諦めきれないで音大入って…、皆上手じゃないですか。」
「そりゃ下手な子は入れないわよね。」
「今まで教えてもらってきた先生方、技術面は一流って褒めて下さったんだけど…。」
「うっ、私、そんなこと言われたことなかった…。」
「でも、何かが足りないって思ってた時、Lentoのオーデションを知って応募したんです、自分の演奏を聴いてもらえてお金がもらえたら音大生にとってサイコ~、なことですしね。」
「そうなのよね~、私は落ちちゃったけど…、最初の課題は何を弾いたの?」
「一番好きな曲って言われたから『ねこふんじゃった』にしたの。」
「な、なに~?!」
「もちろん変奏曲に即興でアレンジしたんだけど、ちょっと前に飼い猫のチャトランが死んじゃたこと思い出しちゃって…。」
「次の課題の前に面接とかなかった?」
「楽しかったわ、何か白川さんとずっとおしゃべりしてた気がする。」
「私の時は緊張してぜんぜん話せなかったわ。」
「え~そうなの、でも最後の課題で困ったの。」
「苦手な曲、嫌いな曲ってやつね。」
「私、苦手な曲、嫌いな曲って思い浮かばないんですけどって正直に言ったら、じゃあリストの超絶技巧練習曲はどう?って言われて、苦手でも嫌いでもないんですけどって言ったら、聴いている人が楽しくなるようにアレンジできる?って。」
「あの曲は…。」
「アレンジして良いわけだから何とかなったの、原曲のままだったらちょっと楽しくはできなかったわね。」
「そ、それ、今度聴かせてくれない、多少違ってもいいから。」
「良いですよ、頭に残ってるから多分…、でもLentoのライブラリイへ行けば…、待てよ私のCDどうのこうので…、事務室に全部まとめて置いてあると思います。」
「じゃあちょっと行って来るわ。」


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