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長井祥子と緑川真 -1 [Lento 2,夏]

Lentoの休憩室、中村和音のピアノが流れている。
独りモニターを見る、緑川。
そこへ仕事を終え着替えを済ませた祥子が入ってくる。
緑川に軽く会釈をして緑川の近くの席へ。

演奏が終わるのを見計らって、緑川。

「祥子ちゃんお疲れ。」
「お疲れ様です。」

「祥子ちゃん卒業後のことは決まったの?」
「それが…、正直な所…、まだ方向性すら見えてなくて…。」
「卒業の方は問題ないんでしょ?」
「はい、今までやるべきことはやってきましたから。」
「何か問題でも?」
「そうですね…、大学に入る時は…、もちろん音楽の道でと…、だから、Lentoの学生プレイヤーオーデションにも応募させていただいたのですが…、私の実力では…、それでもLentoで働いていれば何かプラスになるかもと思ってホールで働かさせていただいてきた訳ですけど…。」
「何時もしっかり働いてくれるから助かってますよ。」
「でも和音ちゃんの演奏を聞いていて…、簡単に負けを認めた訳ではないんですよ、自分なりに和音ちゃんを目標にピアノの練習に打ち込んで…、でも多少の技術は磨けても彼女のセンスにはとても及ばなくて…。」
「彼女は特別ですよ。」
「そうですよね、それでいて先輩だからと私を立ててくれて…。」
「君がホールバイトの子達をよく面倒見てくれているからですよ。」
「でも、それは年長者として当たり前のことですから、私には真子ちゃんみたいな踊りの才能とかもないですし…、何の取り柄もない自分がいったいどんな仕事をしたらいいか分からなくなってしまって…。」
「やはりそうでしたか。」
「えっ? やはり?」

「実は今、君とここで話をしてるのは偶然ではないんですよ。」
「はぁ。」
「よく、あるじゃ有りませんか好きな子と偶然に出会うために1時間待つとか。」
「えっ? …? あはは、緑川さんって、はは、意外とお茶目さんなんですね。」
「まぁシフトが分かってるから長くは待たなくて済むんだけどね。」
「あ~、ずる~い。」
「ずるいついでに祥子ちゃんのこと、スタッフに色々聞いてみたんだけどね…。」
「え~! やっだ~!」
「その上でお願いしたいんだけど。」
「はい?」
「卒業後もLentoで働いてもらえませんか。」
「えっ?」


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